バリュエンスホールディングス株式会社 嵜本 晋輔 Shinsuke SAKIMOTO

未来を想像することは
早ければ早いほど将来の役に立つ

嵜本 晋輔嵜本 晋輔

プロサッカー選手がネクストキャリアへの一歩を踏み出す上で、その決断や心構えについてはどのように考えていますか?

「プロサッカー選手としてセカンドキャリアについて悩んでいます。どうしたらいいでしょうか?」という疑問や不安を抱えている選手も少なくないと思います。ただ正直なところ、現役を続けるか、セカンドキャリアに踏み出すかという二択しかない中、個人的にはどちらでもいいのではないかと思っています。

むしろ大切なのは、自分が決めた意志決定を将来的に正しかったと捉えられるかどうかという点。サッカー選手を続けると決めたのであれば、現役として結果を出すために努力を続ければいい。一方、プロサッカー選手という立場を手放し、新たな一歩を踏み出すという決断をするのであれば、新天地で成功を手に入れられるよう必死に取り組むだけ。家族や指導者があなたの将来を選択し、決定するわけではありません。自分の意志決定を、自らの手で正しかったと言えるようにできるかどうか。それだけの話であり、悩んでいる暇があるならば、少しでも早く未来に向けてアクションを起こしたほうがいいというのが私の考え方です。

現役時代と会社員時代を比較して、仕事を進める上で共通する要素があれば教えてください。

アスリートには、自分で目標を設定する能力があると思っています。同時に、現在地を明確に把握し、目標と現在地のギャップを埋めるために必要な実行と改善のサイクルの回し方に長けています。つまり、PDCAサイクル(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善を繰り返し、業務を継続的に改善していく手法)の回し方がとても優れているのです。業務の改善に向けたサイクルを回すことは、一般社会でも同じように求められます。アスリートの皆さんは、改善の仕方、成長の仕方を熟知しているわけですから、もともと持ち得たその能力を新たなステージでも存分に生かせばいいのだと思います。

アスリートの多くは、「自分はスポーツしかやってきませんでしたから」という言葉を口癖にしています。あくまでそれは、世の中が作り出したストーリーなのだと私は考えています。本当はとてつもなく大きな可能性を秘めているにも関わらず、「スポーツしか……」という周囲の目に影響を受け、いつしか上記のフレーズが口癖になってしまったのだと思うのです。そのような環境を少しでも変えるために、私がグループCEOを務めるバリュエンスグループでは、元アスリートの方々を仲間として迎え入れ、ネクストキャリアでも十分に活躍ができるという実績を作ろうと取り組んでいます。セカンドキャリアで成功する方々の存在を目にすることによって、現役アスリートの皆さんのモチベーションが高まり、それぞれが持っている無限の可能性がより広がっていくと信じています。

ネクストキャリアを見据えて、プロサッカー選手が現役時代から意識して取り組むべきはどのようなことでしょうか?

アスリートが競技に専念するという考え方を否定するつもりはありません。ただ個人的に、現代社会においてそのような発想はオールドタイプなのではないかと思っています。世の中の進化や変化がこれほどスピーディーに進んでいく中、Jリーガーもプロ入り当初から自身の3年後、5年後、10年後を見据えるべきであり、未来を想像することは早ければ早いほど将来の役に立つと考えています。

そのためにも、サッカーだけに専念して井の中の蛙のようになってしまうのではなく、外気に触れることがとても重要だと考えています。その際のポイントは、積極的に“プロサッカー選手”という肩書を武器にすること。現役Jリーガーという肩書は大きな武器になりますし、それを示すことによって人との出会いは確実に増えます。多様な考え方に触れ、自らの将来をイメージするためにも、サッカーの世界だけで過ごすのではなく、外気に触れるきっかけを自分自身で作り出すことをお勧めします。

ネクストキャリアを検討している現役選手たちに向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。

皆さんは、これまで十分に努力を積み重ねてきたからこそ、プロサッカー選手という立場へ登り詰められたに違いありません。この世の中で、自分が好きなことに無我夢中で手を伸ばし、自分が得意なことを仕事にして、やりたいことに多くの時間を費やすことのできる人間はほんの一握りです。プロサッカー選手になった時点で、皆さんは人生の豊かさや幸福感を他人よりも多く味わっているのではないかと思います。

自らの努力によって自分を楽しませることのできる人物は、たとえフィールドが違っても、自分自身の人生に喜びを提供できるポテンシャルが十分にあるはずです。ぜひその可能性を閉ざすことなく、自分には無限の可能性があると信じて、他業界、異業界にも飛び込んで行ってもらいたいと思います。