TREND 2019/02/22

緊張は成功のもと!? あがる才能を持った皆様に贈る応援エッセイ

皆様はあがり症ですか? プレゼンの時だったり、講演を前に緊張するタイプですか?
今回は、そんな悩みを抱える皆様にお届けする記事です。

■そもそも、緊張って何?

大手企業の社長・トップアスリート・大物ミュージシャン…一流と呼ばれる成功者たちは緊張をしながらも、気持ちを高揚させながらもリラックスしているという、絶妙なバランスを維持しながら結果を出しています。
「本番前に必ず○○をして、緊張をほぐす」という習慣をつける、ワンツー呼吸法を意識してみる(鼻で吸った時間の倍の時間をかけて、ゆっくり口から吐く)、イメージトレーニングをしっかりするなどなど、それぞれに合った方法を見つけています。緊張の上手いほぐし方とか、この記事にそのような内容を期待された方には「なんだ、そんなことか」と言われてしまいそうですが…。

あがり症は緊張状態の極限であり、危険に立ち向かうか回避するために、体がエネルギーを放出している状態です。異常を察知した脳はアドレナリンというホルモンを分泌し、自律神経の交感神経が優位になり、脈が早まり身体全体に大量の血液が送り込まれます。緊張状態は迫りくる危機から生き残るために、人間が持つ本来の能力以上のものを引き出そうとしている、攻めの状態なのです。

前振りが長くなりましたが、2月18日、株式会社宣伝会議からビジネス書『緊張して話せるのは才能である』が発売されました。著者はトップ・プレゼン・コンサルタント、ウォンツアンドバリュー 取締役 永井千佳さんです。
永井さん自身も極度のあがり症にもかかわらず、演奏家として舞台に立ち続けます。
そんな彼女は断言します。

「緊張していいんです。緊張こそ、あなたの才能です」

■話題を呼んだ口下手芸人のスピーチ

お笑いコンビ≪カラテカ≫の矢部太郎さんが描くコミックエッセイ≪大家さんと僕≫(新潮社)が、第22回 手塚治虫文化賞の短編賞を受賞したのは昨年のことでした。

新宿の一軒家の2階に引っ越してきた矢部さんこと僕と、1階に住む88歳の大家さんとの交流の日々を描いたもので、ほっこりとしたやりとりが人気を博し発行部数も76万部を突破しました。
父は絵本作家やべみつのりさんで、小さな頃から絵を描くのが好きだった矢部さん。
大家さんと2人でお茶をしていた時に、知り合いの漫画原作者の倉科遼さんに偶然会って話をしたことがきっかけとなり、この作品は誕生しました。

矢部さんはシャイであがり症なことで有名で、「口下手芸人」を自称するほどの徹底っぷりです。
そんな矢部さんが、手塚治虫文化賞贈呈式で行ったスピーチが感動的だったというエピソードが話題になりました。

「僕はいま40歳で、38歳のときに漫画を描き始めました。38歳で漫画家になると言ったら、普通は周囲が全力で止めると思うのですが…」

贈呈されたアトムのブロンズ像を手にして、眺めた後、彼は話しはじめました。

「大家さんがいつも、”矢部さんはいいわね、まだまだお若くて何でもできて。これからが楽しみですね”と言って下さっていたのですね。ご飯を食べていても、散歩をしていても、ずっといつも言って下さるので、本当に若いような気がしてきて、本当に何でもできるような気がしてきて……。これはあまり人には言っていないのですが、僕の中では、38歳だけど18歳だと思うようにしていました。だからいま、20歳(ハタチ)なんです。何を開き直っているんだと思われるかもしれませんが、これは本当に効果があって、10代だと思ったら大概の失敗は許せました。」(※1)

■緊張を超えた先に

冒頭でご紹介した『緊張して話せるのは才能である』の著者 永井千佳さんの話に戻りましょう。
永井さんは続けます。
「巨匠と言われる世界的な演奏家は、みな超あがり症です。ピアニストのマルタ・アルゲリッチも、テノール歌手のマリオ・デル・モナコも、指揮者のカルロス・クライバーも、本番前に極度の緊張で不安になってコンサートをキャンセルしてしまうこともしばしば。20世紀最高のピアニストと言われるスヴャトスラフ・リヒテルは、本番前に緊張で歩けなくなり、指揮者が支えないと舞台に出られないほどでした。そんな彼らは、本番ではまさに鳥肌が立つような演奏をします」(※2)

そこで冒頭の言葉に続く訳です。

「緊張していいんです。緊張こそ、あなたの才能です」

自分の緊張を良い方向に活かすことができた時、その人は普段以上の力を発揮することができるーそれに失敗を恐れて緊張して、そのことによって失敗をしてしまっても、極論を言えば命を取られるような失敗なんてまずありえません。
大丈夫、大概の失敗は許されます。38歳だって18歳になれますし、そんなことをしなくても皆様はまだまだ若いのですから。

今あなたの前に「立ちはだかる壁」は高いかもしれない。
でもそれは、「扉」かもしれない。(エイブラハム・リンカーン)


大舞台に臨むあなたに幸あれ!

※1 Book Bang「口下手なカラテカ・矢部太郎の言葉に会場中が号泣! 手塚治虫賞贈呈式の受賞スピーチ全文」(2018年6月20日掲載)より引用
※2 PRESIDENT Online「口下手な矢部太郎の言葉が感動を呼ぶワケ」(2019年2月20日掲載)より引用