コロナの影響を受け、売り上げを大きく落としてしまった業界はたくさんあります。
特に、度重なる緊急事態宣言の繰り返しにより、営業時間短縮を余儀なくされている飲食店は大きな打撃を受けてきました。
今回は、今後飲食業界への就職を検討している方に向けて、
- 飲食業界がコロナで受けた影響
- 今後の飲食業界はどうなるのか
以上の2点について詳しく解説していきます。
現状は言うまでもなく厳しいものの、今後は果たしてどうなるのかが重要です。
様々なデータを用いながら、飲食業界の今後について考えてみましょう。
飲食業界がコロナで受けた影響
飲食業界はコロナで大きな打撃を受けたことは周知の事実です。
しかし、一体具体的にどのくらいの打撃を受けたのでしょうか。
この章では、
- 店舗あたりの来店数
- 倒産社数
- 売上
の3つの項目で、コロナが飲食業界に与えた影響について解説していきます。
1.1店舗あたりの来店件数90%減
店舗あたりの来店件数はコロナの影響を受けて激減しました。
どのくらい減ったのかを正確に知るために、ここでデータをご覧いただきましょう。
▼大型連休中の来店件数
2019年 | 2020年 | |
1店舗あたりの平均来店数 | 22.6件 | 2.2件 |
参考:新型コロナウイルス感染症影響データ① 【大型連休中 4/29-5/6】昨年同期比 1店舗あたりの平均来店件数
上記は2019年と2020年のゴールデンウィーク(4/29〜5/6)の来店件数を比較したもの。
22.6件から2.2件にまで大きく減少していることが分かります。
その下げ幅はなんと90.3%!
これではもはやほぼ「ないに等しい」状態と言っても過言ではありません。
2.倒産社数では飲食業界が最多
コロナウィルスの影響を受け、多くの企業が破産の手続きや、事業を停止し法的整理の準備などに入っています。
数ある業界の中で最も倒産社数が多い順から3つ挙げると以下の通りとなります。
▼業種別倒産社数TOP3
1位 | 飲食業 | 141社 |
2位 | ホテル・旅館/建設・工事(同数) | 72社 |
3位 | アパレル小売 | 54社 |
参考:NHKニュースウェブ「コロナ影響で倒産 計900社に 飲食店は最多の141社」
旅行に関わる業界の方が大きな打撃を受けているかと思いきや、圧倒的に倒産社数では飲食業の方が多いですね。
また、この数字はあくまでも倒産した会社の数であり、飲食店の店舗数ではありません。
141社の中には多くの店舗を運営する企業も含まれていることを考えると、計り知れないほどの店舗が閉店してしまったことが容易に予測できます。
3.9割以上の飲食店で売上が激減
調査によると、飲食店のほぼ全てとも言える9割ほどが「コロナの影響で売り上げが落ち込んだ」と回答しており、その内訳は以下の通りとなります。
▼昨年同時期との売上比較(2020年11月時点)
昨年同月より50%以上減った | 21.2% |
昨年同月より30%以上減った | 18.5% |
昨年同月より20%以上減った | 16.2% |
昨年同月より40%以上減った | 13.5% |
昨年同月より10%以上減った | 10.6% |
参考:プレスリリース・ニュースリリース配信サービスのPRTIMES「飲食店の9割が売上の減少に苦悩。新型コロナに翻弄された2020年を振り返る」
全回答のうち、最も多いのが50%以上売り上げが落ちたとの回答。
もはや半分以上売り上げが落ちれば経営は非常に難しく、すぐに閉店せざるを得なくなるケースも十分考えられます。
数字で改めて見ると、飲食業界がいかに苦しい状況に陥っているかがよく分かります。
飲食業界の今後「ウィズコロナ」で何が変わるのか
売り上げが激減し大打撃を受けた飲食業界ですが、今後の見通しはどうなのでしょう。
日本は特に外食で人とのコミュニケーションの場を設ける文化が根強く、飲食店はなくてはならない存在です。
飲みニケーション、などという言葉があるくらい、人と人との繋がりを広げるためにも居酒屋やレストランなどの場は重要。
今後の飲食業界はコロナをきっかけにどのような動きになるのか、考えられる3つの現象について解説します。
1.ハレの日需要は今後も高まる
飲食店を利用する際には様々な目的があります。
友達との食事や恋人との食事、会社の付き合いや取引先との接待などいろいろなケースがあるもの。
コロナの影響を受けて著しく変化した「利用目的」にはどのようなものがあるのかを見てみましょう。
▼利用目的別来店件数に占める比率(2019年と2020年の比較)
% | 記念日 | デート | 家族 会食 |
知人 会食 |
社内 会食 |
接待 | 歓・ 送迎会 |
忘年会 | その他 |
前年比 | 116.3 | 114.2 | 107.9 | 88.6 | 72.5 | 70.1 | 69.7 | 60.9 | 99.4 |
参考:プレスリリース・ニュースリリース配信サービスのPRTIMES「2021年飲食業界動向予測」
このデータの意味することは、主に以下の2点です。
- 仕事がらみの飲食店利用が著しく減った
- 記念日や家族とのディナー利用などは割合が増加している
ハレの日利用という言葉がありますが、これは、「ハレの日」つまりおめでたいことを祝う日などに飲食店を利用すること。
ハレの日には具体的に以下のようなケースがあります。
- 結婚記念日祝い
- 誕生日祝い
- 還暦祝い
このようなケースに共通するのは、これらが主に「家族内での会食」であること、そして1年に1度、もしくは一生に1度しか訪れない貴重なイベントであるということです。
このようなハレの日利用はコロナ禍でも続いています。
さらに、お祝いごとである上に、滅多に外食をしない今だからこそ、高級なお店を選ぶ傾向にあるのも注目すべき点です。
つまり、客単価だけで考えれば「ハレの日利用」の占める割合が高くなれば、効率よく利益につなげることは可能です。
ここに、今後の飲食業界を大きく復活に導くヒントが隠れていると思えてなりませんね。
2.デリバリーやテイクアウトは今後も伸びる
コロナの影響で、特に目立つ変化と言えば「デリバリーやテイクアウトが一気に増えた」ことでしょう。
飲食業界では、これまでイートインのみだった店舗の多くが持ち帰りや宅配のサービスを初めています。
▼テイクアウト販売についての調査
テイクアウト販売を行っている | 51.4% |
テイクアウト販売を行なっていないが準備を進めている | 12.5% |
テイクアウト販売を行なっていないが検討中 | 19.6% |
テイクアウト販売を行っていない、今後も予定はない | 16.5% |
参考:シンクロフードプレスリリース「新型コロナ影響により飲食店の8割が売上減。売上維持のために「テイクアウト」を開始・強化する店は半数以上」
上記のデータからも分かる通り、8割以上の店舗がテイクアウトを行っている、もしくは予定していると回答しています。
そして、この変化は利用者側にもたくさんのベネフィットを与えます。
- これまでなかった持ち帰りメニューができて嬉しい
- 高級店のランチがお手頃価格で楽しめる
- デリバリーのチョイスが増えて利用しやすくなった
これまであまり外食をしなかった人の中には、コロナをきっかけにレストランのランチボックスをテイクアウトしたり、頻繁にデリバリーを利用するようになったという人もいます。
この場合、むしろコロナの影響で、以前より飲食のサービスにお金をかけるようになっているのですから業界としてはプラスです。
というわけで、デリバリーやテイクアウトはコロナが収束したとしても文化として根付き、成長し続けていく可能性が極めて高いと言えます。
3.ひとりめし文化がさらに浸透する
コロナ禍でも、「一人での食事なら良いだろう」と、一人でレストラン利用をする人はいます。
むしろ、このひとりめし文化はコロナで急速に浸透し、多くの飲食店がこの変化をチャンスと捉えています。
ファミリーレストランの大手チェーン「ガスト」が1人席を作り話題を集めたのはまさに良い例ですね。
これまで、飲食店を利用することは、
- みんなでワイワイ楽しんで食事をする
- 食事を口実に懐かしい仲間や友人と再会する
- 会話と食事を一緒に楽しむ
などのイメージだったのです。
それがコロナの影響を受けて、「自分だけでも美味しいものを食べる」ことが飲食店を利用する多くの人の動機になっています。
ひとりめしは恥ずかしいことや寂しいことではなく、今や当たり前のこと。
逆に言えばひとりでも入りやすいお店こそ、コロナ禍では利用客を掴みやすいのです。
飲食業界自体の価値は今後も下がることはない
結論、飲食業界が受けたコロナの打撃は大きいものの、今後も飲食業界の価値が下がることはないと言えます。
なぜなら、コロナをきっかけに良い変化も起こったからです。
- テイクアウト・デリバリーの選択肢が増えた
- ひとりめしに抵抗を感じなくなった
- ハレの日利用ではうんと贅沢をするようになった
などが「良い変化」と言えるものですね。
確かに飲食業界自体の売り上げは激しく落ち込みました。
しかし、だからと言って今後の飲食業界に一切希望が持てないというわけではありません。
コロナの影響を受けてあらたに根付いた文化をうまく利用することで、今後挽回していくことは十分に可能です。
まとめ
今回の記事では、コロナで大きな影響を受けた「飲食業界」について解説しました。
多くの会社が倒産し、多くの飲食店が閉店を余儀なくされたのは事実です。
しかし、コロナの影響を受けたことで、新たな道が開けたとも言えます。
今後ますます浸透していくであろう、デリバリーやテイクアウト、そしてひとりめしの利用にフォーカスし、これまでにないサービスを考えていくのも一つのやりがいになるでしょう。
これまで飲食業界への道を希望していたけれど、コロナの影響が心配で「本当に飲食に進んで良いのかな」と迷っている方も多かったと思います。
飲食業の需要自体がなくなることは決してありません。
今からでも、夢見ていた飲食業への道を進んでみても良いのではないでしょうか。