就職において人気の高いホテル業界。
激務であると言われながらも、ホテルで働きたいと考える人は多くいます。
2020年、飲食業界同様にコロナによる影響を大きく受けたホテル業界ですが、今後の見通しはどうなのでしょうか。
今回は、ホテル業界に注目し、
- コロナ禍のホテル業界の現状
- ホテル業界の今後の見通し
- ホテル業界に就職する選択肢はアリなのか
以上の3点について詳しく解説していきます。
ホテル業界に憧れのある方や、今後ホテル業界への就職を検討されている方にとって、参考になる内容が満載です。
ぜひ最後まで読み進めてくださいね!
コロナで大打撃を受けたホテル業の現状
「ホテルはどこも散々なことになっているんだろうな」とコロナ禍のホテル業界についてなんとなくイメージすることはできても、具体的にどの程度のダメージを受けているのか把握していない人は多いでしょう。
この章では、ホテル業界がコロナによりどのような影響を受けたのか、データを用いて解説していきます。
具体的な数字を見ることで、ホテル業界の現状を正しく把握しておきましょう。
1.倒産数では飲食店に次いで2位
以下のデータは、2020年の2月から10月までの倒産した企業数を業界別に示したものです。
理由がコロナの影響とは限りませんが、この期間に倒産した企業のほとんどはコロナの影響を受けていると考えるのが自然でしょう。
▼業種別倒産件数(2020年2月〜10月)
出典:帝国データバンク「新型コロナウイルス関連倒産動向調査」2020年10月
倒産企業数で見ると、ホテルは2番目に多かったということになります。
これだけの企業が、たったの8ヶ月の間に倒産するなど前代未聞の事態。
倒産は免れても、従業員は「給料○割カット」、「勤務日数が半分以下に減らされる」など、コロナにより収入面でかなりの影響を受けています。
2.半数以上のホテルが売上80%以上ダウン
今度は売上の減少幅についてです。
以下のデータは、日本政策金融公庫が2020年6月半ばに実施した調査結果。
コロナの影響が大きくなり始めて数ヶ月の段階でありながら、売上の減少幅はすでに深刻な数値を示していることが分かります。
▼ホテル・旅館業売上減少幅
5%未満 | 全体の0.5% |
5%以上10%未満 | 全体の0.5% |
10%以上20%未満 | 全体の0.5% |
20%以上30%未満 | 全体の1.1% |
30%以上40%未満 | 全体の2.7% |
40%以上50%未満 | 全体の4.9% |
50%以上60%未満 | 全体の12.0% |
60%以上70%未満 | 全体の9.3% |
70%以上80%未満 | 全体の13.7% |
80%以上 | 全体の54.6% |
売上減少幅が80%以上と回答しているホテル企業は全体の54.6%。
半数を超えるホテル企業が例年と比べて8割以上も売上を落としているのです。
売上減少幅が5割を超える企業が、全体の89.6%!
調査が実施されたのが2020年6月であったことを考えれば、これ以降さらに状況が悪化した企業が多いことは容易に想像ができます。
多くの企業が倒産してしまったという事実にも納得せざるを得ませんね。
3.稼働率が記録史上最低値まで下落
ホテル業界で重視されるのが「客室の稼働率」です。
宿泊客が利用した客室の数をホテルの全体客室数から割り出した数値のこと。
例:200室のホテルで、実際に宿泊客が滞在した客室が100室→稼働率50%
コロナの影響を受けて、ホテルの稼働率がどう変化したのかを見てみましょう。
▼ホテルタイプ別客室稼働率の推移
令和2年に稼働率が急落していることが見てとれますね。
ホテルタイプにより下がり幅に差がありますが、全体的に客室稼働率は半分から半分以下の数値にまで下がっていることが分かります。
ホテルの稼働率をそこそこに維持できたホテルがあるとしても、客室単価は大きく下がっているケースがほとんど。
コロナ禍を生き残るために、料金を下げ「テレワーク」目的のビジネスマンを対象にしたプランを打ち出したホテルも数多くあります。
「何でもいいからとにかく稼働率を上げたい」という、まさに苦肉の策ですね。
また、外国人観光客がゼロになるという異例の事態となったため、外国人をターゲットにしていたホテルは特に大きな影響を受けています。
ホテル業の今後が絶望的ではない5つの理由
ここまでの内容で、「もうホテル業界は終わりだな」と思った人もきっと多いのではないでしょうか。
しかし、ホテル業界の今後を考えるにあたり「ネガティブな要素しかない」のかと言えばそうではありません。
今後のホテル業界に希望が見える部分も確かに存在するのです。
ここからは、ホテル業界の今後が絶望的でないと考えられる5つの理由について解説します。
1.ホテルの需要はなくなることがない
コロナで旅行が全面的に自粛モードになってしまったとはいえ、ホテルの需要がなくなってしまったわけではありません。
なぜなら、多くの人たちが今もなお「早く旅行に行きたい!」と待ち焦がれているからです。
コロナ禍で移動が自粛されたことにより、宿泊自体の需要は確かに減少しました。
ですが、自粛モードが解消されれば、人々はまた「今度はどこに行こう」と旅行の計画を練り、これまでのストレスを発散するために積極的に旅行することが予想されます。
その証拠に「Go To トラベル」が適応できた時期に、実に多くの人々が飛び出したかのように旅行に出かけた前例があります。
現状は厳しいですが、今後も永遠に自粛が続くわけではないことを考えれば、時間をかけながらホテル業界が息を吹き返していくことは確実であるようにも見えます。
2.海外旅行の代替案としての国内旅行
コロナ禍で特に制限されているのが「海外旅行」です。
今もなお世界中のたくさんの国々が、渡航を制限し、外国人の入国を禁止しています。
ですが、一方ではすでに「条件付き」で入国できる国が増えており、中には2021年夏から観光客の受け入れを再開することを検討している国もあります。
とはいえ、自由に海外旅行ができるようになるまではまだ時間がかかると予想されます。
そこで注目されるのが「国内旅行」です。
これまで年に一度は家族で海外旅行にでかけていた、などの家族なら、「代わりに今年は国内で検討しよう」となることも珍しくないでしょう。
国内旅行は海外旅行に行きづらい今だからこそ、その代替案として選ばれやすくなっているのです。
3.ワーケーション・ステイケーション需要
“Work”(仕事)と“Vacation”(休暇)をかけあわせた「ワーケーション」、“Stay”(滞在)と“Vacation”(休暇)をかけあわせた「ステイケーション」などの言葉を耳にしたことがある人は多いでしょう。
これらはコロナ以前から使われていた言葉ですが、コロナをきっかけに一気にその知名度を上げています。
いつでもどこでも働くことができるリモートワーク文化が急速に広まり、フリーランスをはじめ、会社員でさえリモートで働くスタイルを認められる事例が増えています。
また、あえて近場のちょっと贅沢なホテルにステイして、出かけることなくゆったりとホテルステイを楽しむステイケーションは、まさにコロナ禍に適した休暇の過ごし方です。
ワーケーションやステイケーションの素晴らしさを多くの人々が知った今、ホテルの在り方は昔のそれとは一味も二味も違うものになったのです。
このような新しい文化が根付き、従来とは異なる目的でホテルに滞在する人々が増えていくことを予想すれば、今後のホテル業界に希望があることが分かります。
4.有名ホテルがコロナ禍に次々にオープン
本当にホテル業界の今後が絶望的な状況にあるとすれば、もう新しいホテルがオープンすることも少なくなっているはずです。
しかし、実際には「星野リゾート」などをはじめとする有名ホテル企業が、コロナ禍に新規ホテルを積極的にオープンしているという事実があります。
星野リゾートは、高級旅館や高級ホテルを全国規模で展開する有名企業ですが、京都市内のなんと3箇所に新しいホテルをオープンさせることがすでに決定しています。
現に、星野リゾートが運営する京都の旅館では、「近距離旅行者(マイクロツーリズム)」が増え、前年よりも稼働率をアップさせているところがあるのです。
ワクチンの普及なども考えれば、今すぐでなくても確実に観光産業は盛り返し、これまでの反動で以前以上の盛り上がりになると予想しているホテル企業は少なくありません。
今後ホテル業界への就職を検討する人にとっても、多数のホテルが新規オープンしている様子を見れば、「今後の見通しはそれほど暗くないのかもしれない」と思えるのではないでしょうか。
5.「いつもより贅沢」を求める人々
ホテル業界以上にコロナのダメージを被っている業界と言えば、他でもない「飲食業界」です。
飲食業界は大きな損害を被りましたが、そこにも一筋の希望の光を見ることができます。
以下は、飲食店に訪れる人々の来店目的をまとめたものです。
▼利用目的別来店件数に占める比率(2019年と2020年の比較)
% | 記念日 | デート | 家族 会食 |
知人 会食 |
社内 会食 |
接待 | 歓・ 送迎会 |
忘年会 | その他 |
前年比 | 116.3 | 114.2 | 107.9 | 88.6 | 72.5 | 70.1 | 69.7 | 60.9 | 99.4 |
参考:プレスリリース・ニュースリリース配信サービスのPRTIMES「2021年飲食業界動向予測」
このデータから分かることは、「仕事関係や付き合いとしての飲食店利用は減ったけれども、特別な日のお祝いに利用する人の率は大きく増加している」ということ。
つまり、もっとシンプルに言えば、「特別なイベントは特別な場所で過ごしたい」と考える人たちが多いということ。
これをホテル業界に当てはめてみると、以下のことが予想されます。
- 年に1度の家族旅行はあきらめたくない
- めったに行けないからこそ高級ホテル(旅館)に滞在したい
- 頻度は下がってもクオリティは重視したい
上記の予想を踏まえると、今後はこれまで以上にランクの高いホテルや旅館が選ばれやすくなる可能性も十分にあります。
前述した星野リゾートも、このあたりのことを予想しているのかもしれませんね。
ホテル業への就職は検討する価値がある
結論、ホテル業界への就職を検討する余地は十分にあります。
ホテル業界に就職すること自体にリスクがないとは言い切れませんが、今の時代に「確実にリスクが全くない業界」など存在しません。
ホテル業界の中には、今もなお積極的に採用を行い新規オープンに積極的な企業もあります。
今後ホテル業界を目指すのであれば、コロナ禍に適した策を打ち出しているホテルや、コロナ禍の売上減少幅がより少ない企業を狙うのが良いでしょう。
「ホテル業界ならどこも変わらない」のではなく、企業により異なる点はたくさんあります。じっくりリサーチした上で狙う企業を絞り込んでいくと良いです。
まとめ
今回の記事では、ホテル業界の現状と今後の見通し、就職先として検討する価値の有無について解説しました。
今回の記事のポイントは以下の通りです。
- コロナによりホテル業界が受けた損失は大きい
- ホテル業界の今後の見通しは希望の持てるものである
- ホテル業界への就職を検討する価値はある
コロナはこれまでの常識をも変えるほどの大きな影響を世界中の人々に与えました。
しかし、今後も経済は常に動き続けます。
あなたがホテル業界への就職に少しでも興味を持っているのであれば、まずは現状を正しく把握し、事実をもとに検討しましょう。
今後のホテル業界が「確実に低迷し続ける」根拠は一つもありません。
イメージに振り回されるのではなくデータに基づいた思考を癖付け、あなたにとって最善の選択をしましょう!