「仕事にやりがいを感じられない」「人間関係に悩まされている」「待遇に不満がある」など、退職したくなる理由は人それぞれ。精神的・肉体的にきつい状態のまま働き続けるより、早い段階で退職して、より自分に合った職場を見つけたほうが賢明な場合は多いでしょう。
しかし、辞めたいからと言ってすぐに辞められるわけではありませんし、“立つ鳥跡を濁さず”という言葉があるように、円満に退職することはとても大切。では、そのためには退職までにどんな手順を踏めばいいのでしょうか?
退職を決意してから実際に退職するまでの流れは?
まずは、退職する意思を固めてから実際に退職するまでの流れをみていきましょう。
直属の上司に退職の意思を表示する
退職の意思が固まったら、直属の上司に意思表示します。伝え方はメールやチャットではなく、直接会って伝えましょう。退職の意思を伝えて理由を尋ねられた際、会社への不満をぶつけるのはご法度。円満に退職できなくなる可能性がありますし、なにより、ここでこじらせてしまっては、意思表示から退職までの期間、辞める本人が働きにくくなるはずです。
上司に意思表示するタイミングは、民法では「退職する2週間前まで」と定められていますが、まずは就業規則を確認することが大切です。一般的には、退職希望日の1カ月半~2か月前が意思表示のタイミングとされています。
退職願を提出する
退職希望日の約1か月前には退職願を提出します。退職願を提出したら、業務の引き継ぎを進めていきます。自分が担当していた業務を引き継ぐ後任が決まっていなくても、資料のファイリングやマニュアルの作成をおこなっておけば、その後、スムーズに引き継いでもらえます。
クライアントやお世話になった方々に挨拶する
退職10日前くらいまでには、クライアントやお世話になった方々への挨拶を済ませます。直接会うかまたはメールにて、退職日およびこれまでお世話になったお礼を伝えることが大切です。
貸与品返却、必要書類の受け取り
在職中に使っていたデスクやロッカーの整理は、退職当日までに少しずつ進めておきましょう。また、会社からの貸与品返却や必要書類の受け取りもお忘れなく。
退職時に会社に返却するもの、会社から受け取るものは?
退職時に会社に返却するもの、会社から受け取るものは複数あるので、退職日当日に慌てることのないよう、事前にリストアップしておくといいでしょう。
制服は、きちんと洗濯してから返却する必要があります。その他、業務で使った顧客リストやデータがあればそれも返却します。会社から貸与されていたパソコンなども返却します。
・雇用保険被保険者証
・源泉徴収票
・年金手帳
離職票は、転職先が決まっている場合は使うことはありませんが、そうでない場合、失業保険の手続きのために必要になります。雇用保険被保険者証は、次に入社した会社で雇用保険加入手続きをおこなうために必要になりますが、自分で保管していて紛失した場合などは離職票などで雇用保険被保険者番号を確認することになります。源泉徴収票は所得税の年末調整のために必要となります。
退職の意思表示の際の注意点
直属の上司に退職の意思表示をする際には、「〇月末をもって退職いたします」とはっきり告げることが大切です。なぜかというと、「実は退職を考えているのですが……」と曖昧な表現で切り出すと、「退職するかどうか迷っているのかな?」と思われて、「君には期待しているんだからがんばってほしい」と切り返されてしまう場合があるからです。
また、優秀な社員の場合、ハッキリ意思表示しても引き留められる可能性があります。「後任者が決まるまで待ってほしい」などと持ち掛けられて揺らぐことのないよう、意思を固めておきましょう。
競合に転職する場合の注意点
退職の意思表示をすると、上司から転職先が決まっているかどうかを尋ねられることがあります。この際、本当のことを言うかどうかは本人次第ですが、競合への転職が決まっている場合は、「これから探します」とにごしたほうが無難です。
なぜかというと、会社側が機密事項や知的財産が流出することを懸念するから。よからぬ心配をされることを避けるためにも、余計なことは口にしないほうがいいでしょう。
退職届を出してから退職当日までの注意点
退職届を出してから退職当日までの間、引き継ぎに時間を取られることがないようであれば、有給休暇の消化を検討してもいいでしょう。ただし、有給の消化のために転職先企業への入社日を遅らせるのはNG! 最悪、内定を取り消されることもあるかもしれません。
退職後にも注意すべきことがある
無事に退職当日を迎えて安堵も束の間、転職先が決まっているなら転職に向けた準備、決まっていないなら転職活動をはじめるなど、充実した毎日を送ることになるでしょう。
その間、年金や健康保険、失業保険の手続きまでは気が回っても、銀行や生命保険会社への届出は後回しになってしまう人が多いかもしれません。ローンを利用していて転職先がまだ決まっていないなら、場合によっては月々の返済額を減らしてもらうことも必要ですし、クレジットカードの限度額変更が求められる場合もあります。
後々トラブルになることがないよう、退職を心に決めてからは、やるべきことを紙に書き出すなどして一つひとつクリアにしていけるといいですね。
・社員証や名刺など
・通勤定期券
・制服