ビジネス用語として使われる言葉のなかには、日常生活においてはまったく使われないものもたくさんあります。そのひとつが「架電(かでん)」。ビジネスで使われるといっても、業界によってはほとんど使われることがないので、初めて聞くという人も多いかもしれません。とはいえ、いざ仕事の場で耳にしたときに言葉の意味がわからないと、適切な対応ができずに困ることもあるでしょう。そこで今回は、「架電」について説明します。
「架電」とは?
「架電」とは、”電話をかけること”。”かける・かけ渡す”を意味する「架」と、電話のことを指す”電”と組み合わせて作られた熟語です。
もともとは、警察署や検察所、裁判所などの法律関係の職場で使われていた言葉ですが、最近ではそれ以外の職場でも使われるようになってきました。
「架電」という言葉はどのように使われている?
では、具体的にどんなシーンでどのように使われることが多いのかをみていきましょう。
「架電の件」の言い回しでメールや口頭で使う
もっとも多い使われ方が、「架電の件」というフレーズとしての使われ方です。意味としては、「電話で話した件」「電話で話した内容」などとなります。
たとえば、電話をかけてきたクライアントに後程折り返す際、「先ほどお電話でお話させていただいた件ですが」ではなく「架電の件ですが」とすれば、まどろっこしくありません。ただし、口頭での「架電の件」だと、相手が頭のなかで「家電」や「荷電」と変換してしまうことが考えられるので、「お電話でお話した件」のほうが無難でしょう。
営業が使う「架電件数」「架電リスト」
顧客や潜在顧客に電話をしてアポイントを取ったり売り込みしたりするのは主に営業の仕事ですが、電話した件数を「架電件数」、営業の電話をかける顧客リストのことを「架電リスト」と表現する場合があります。
電話がかかってきた旨を伝える「架電あり」
担当者の不在時に代わりに電話を受けた相手が、戻ってきた担当者にその旨を伝える際、「架電あり」と表現することがあります。本来は、「架電=こちらから電話をかけること」なので、相手からかかってきた電話を「架電あり」と表現するのはおかしな話。矛盾が気になるかもしれませんが、言い回しとして定着してしまっています。
「架電業務」とは?
もうひとつのよく使われる言葉が「架電業務」で、求人サイトなどでは「架電業務あり」の記載で人材を募集していることもあります。では、「架電業務」とはどんな仕事かというと、顧客や潜在顧客に電話してアポイントを取ったり自社商品およびサービスを売り込んだりする仕事です。架電業務が多い職種や業界は、以下のラインナップとなります。
コールセンター
個人や法人に電話をかけて、自社商品やサービスの営業をおこないます。いわゆる”テレアポ(テレフォンアポインター)”。架電業務を通して契約にこぎつけた件数によってインセンティブが増えることもあります。未経験可の求人が多くチャレンジしやすいですが、営業電話に不快感を示す相手も多いので、向き不向きによっては精神的にしんどいと感じる人もいるかもしれません。
保険会社
コールセンターのなかで特殊な知識が必要なのは、保険会社が運営しているコールセンターです。取り扱う商品が保険なので、保険の内容や手続きを熟知している必要があります。とはいえ、入社後に研修を受けられるため、一からしっかり学んでいけば問題ありません。
不動産会社
マンションや土地の仲介をおこなう不動産会社も、コールセンターを設置していることがあります。ただし、不動産会社のコールセンターは、架電業務より、入居後のクレームなどを受け付ける受電業務の件数が多い傾向にあります。
人材紹介会社
求人を出している企業に対して、求める人材についての確認のために電話をすることがあります。また、求職者に対して求人情報を紹介するために電話するのも仕事です。いずれにしろ、商品やサービスの売り込みとは違うので、電話をかけることが苦にはなりにくいでしょう。
配送会社
人材紹介会社同様、基本的には受電作業のほうが多いですが、折り返し連絡のために架電業務をおこなうこともあります。ただし、企業ごと、求職者ごとに話す内容が異なる人材紹介会社とは異なり、集荷受付や再配達依頼などが主で基本的には確認することが決まっているため、最近はwebシステムやアプリを利用する人が増えているので、受電作業・架電作業ともに昔よりは件数が少ないといえます。
架電業務に向いているのはどんな人?
続いては、架電業務に向いている人の特徴をみていきましょう。
クレーム対応でダメージを負いにくい
アポなしの売り込み電話の場合などは特に、電話を受けた相手から罵詈雑言を浴びせられがち。また、確認のための電話であっても、適切に対応できなかったことで文句を言われることもあるでしょう。そのたびに落ち込んで次の日まで引きずるなど、気持ちを切り替えるのが苦手なタイプには向いていません。”仕事は仕事”として割り切れる人のほうが、架電業務には向いているといえます。
どんなときも冷静に対応できる
相手のニーズを確認したり、自社ができることを提案したりするなかでは、不測の事態が発生することがあるもの。思わぬトラブルやクレームも然りですが、マニュアルに書かれていないことを訊かれるなどしたら、「こういう場合はどう答えたらいいのかわからない」ということも多々あるでしょう。
そんなとき、臨機応変に対応するのが得意なら、架電業務に向いているといえます。調べないとわからないことを訊かれたなら、「確認後、折り返します」と即座に答えて相手の連絡先を控えることが大事。クレーマーとなった相手からたびたび業務妨害の電話がかかってくる場合など、対応を誤ると大問題に発展しかねないケースもありえます。
話をするのも聴くのも得意
売り込みの仕事は話すのが得意であればいいかというと、そんなことはありません。どんな人だって、一方的に話されたら、話を聞くだけで疲れてしまうし、「押し売りだ」と認識されて当たり前。自社の商品やサービスをアピールするためには、まず相手のニーズを聞き出して、それに対して自社がどんなアプローチができるのかを知ってもらうことが大切なのです。
「架電」はシーンや相手を選んで使おう
知らなかった言葉を知ると、日常的にもその言葉を使いたくなりますが、「架電」は基本的には日常生活で使われることはありませんし、特に口頭でのコミュニケーションにおいて使われると、正しく理解してもらえないことが多いので、使うシーンや使う相手を選ぶよう意識してみてくださいね。
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