ニートを続けて生活に困っても「いざとなれば生活保護で生きていける」と思っている人もきっといるのではないでしょうか。
生活保護は確かに「人が最低限度の生活を送るためにある救済制度」ですが、ニートは生活保護を簡単に受け取ることはできません。
なぜなら、生活保護を受給するためには、様々な条件を満たしている必要があるからです。
今回の記事では、以下の点について詳しく解説していきます。
- 生活保護の受給金額
- ニートが生活保護を受給するための条件
- 生活保護の受給が停止してしまうケース
- 生活保護の申請方法
「生活保護について知りたい」、「ニートでも受け取れるケースがあるとはどういうことなのか気になる」という方にぜひ読んでいただきたい内容です!
ニートが生活保護を受給した際にどのくらいの受給額になるのか
生活保護とは、生活に困っている人に対して「最低限度の生活を保障し、自立をサポートするための制度」です。
仕事をしていないニートは収入がないために生活困窮に陥ることがあります。
この場合も条件を満たせば生活保護が受給できるのです。(条件については後ほど詳しく解説します。)
この章では、生活保護で受給できる金額について、例を挙げながら解説していきます。
基準となるのは最低生活費
生活保護で受け取れる金額は、「最低生活費」を基準に算出されます。
生活扶助は生活費のことで、食費や衣服費、光熱費などが含まれます。
項目によって第1類と第2類に分類されています。
住宅扶助は家賃などの住宅費のことを指します。
最低生活費は居住地・世帯人数・年齢により定められているため、人によってさまざまです。
最低生活費の目安
生活保護の受給金額を知るためには、最低生活費がいくらであるかを知る必要があります。
ここで、東京都23区と愛知県名古屋市で一人暮らしをしている20代を例に挙げ、最低生活費の具体的な金額をお見せします。
▼東京都23区内で一人暮らしをしている20代の場合
項目 | 金額 |
生活扶助第1類 | 47,420円 |
生活扶助第2類 | 28,890円 |
住宅扶助 | 53,700円 |
合計金額 | 130,010円 |
▼愛知県名古屋市で一人暮らしをしている20代の場合
項目 | 金額 |
生活扶助第1類 | 38,430円 |
生活扶助第2類 | 40,800円 |
住宅扶助 | 37,000円 |
合計金額 | 116,230円 |
東京と名古屋では最低生活費が24,000円ほど異なることが上記の計算結果から分かります。
この他にもここでは紹介しきれないほど様々なパターンがあるため、あくまで参考にしていただければ幸いです!
生活保護で受給できる金額は最低生活費と収入の差異。
つまり、最低生活費に満たない収入であれば、収入金額だけで見ると生活保護受給条件に該当していることになります。
ニートが生活保護を受給できる条件
ニートが生活保護を受けられる可能性は低いものの、絶対に不可能であるとは言えません。
ここでは、ニートが生活保護を受給できる場合の条件を4つ挙げています。
これら4つの条件を全て満たすことができれば、生活保護受給の条件はクリアできます。
あなた自身のケースに当てはめて考えてみてくださいね。
1.世帯収入が最低生活費を下回る
お住まいの地域や家族構成により、定められた「最低生活費」があります。
あなたとあなたの同居家族の収入合計である世帯収入が最低生活費を下回る場合には、生活保護受給の対象になります。
生活保護で受け取れるのは「最低生活費−世帯収入」の金額となり、受給対象と認定されても最低生活費全額が受け取れるわけではありません。
2.病気や怪我で働くことができない
病気や怪我が理由で働こうにも今は働くことができない、という状況であれば生活保護受給の対象になります。
そもそも生活保護は、本人が「仕事をしたくてもできない」状況にある場合に、生活費を支給するというもの。
単に、ニートでいたいから、働きたくないから、という人にはまず生活保護は支給されません。
しかし、この場合「同居している家族に十分な収入がない」ことが条件。
結局、病気や怪我で仕事ができなくても、実家で親が養ってくれているとなると生活保護は受給できないのです。
肉体的・精神的に障害があり、働くことができない場合は、障害者として生活保護を受給できます。
ただし、障害者ならニートでも生活保護が受けられるという訳ではありません。
障害があっても、お金や資産があったり、同居する家族の収入が多い場合は難しいでしょう。
3.預貯金・現金・保険・土地・家・車などの財産がない
収入が全くない場合でも、口座に預貯金があったり何かしらの財産を持っていたりすれば、それが理由で生活保護受給の審査に落ちてしまいます。
そのため、ニートが生活保護を受けるとすれば、
- 預貯金
- 現金
- 保険
- 土地
- 自家用車
- 持ち家
などを所有していないことが条件となります。
財産となり得るものを持っているなら、「まずは全部売却してお金を得ましょう」となるからです。
基本、10万円以上の現金があればまず生活保護の申請は通らないと言われています。
しかし、必ずしも10万円未満であれば生活保護受給の対象になると決まったわけではありません。
預貯金に関しても明確な金額が分からないものの、「残高が3万円あったことで、まずはそれを生活費にあててやりくりしてね」と申請の段階で却下されたという話もあります。
4.家族による経済支援が受けられない
ニートの多くは実家暮らしです。
自分が働いていなくても、親が生活に困らないだけの収入を得ていれば生活保護は受けられません。
一方で、例えば両親が他界してしまった、もしくは病気で働けなくなった、などの場合には生活保護が受けられる可能性があります。
重要なのは、家族からの経済支援が一切受けられないことを証明すること。
これができれば生活保護の受給ができる可能性が一気に高まります。
ニートが生活保護を受給中に受給資格が停止される条件
一旦生活保護をどうにか受給できるようになったとしても、場合によっては途中で支給がストップしてしまうことがあります。
生活保護の受給資格を満たし続けることができなければ、その時点で資格を失い支給が「停止」してしまうのです。
ニートでは受給できない生活保護ですが、審査にクリアした後も注意が必要。
この章では、途中で生活保護の受給が停止する条件について3つ挙げておきます。
1.虚偽の報告をしたことが発覚した
例えば貯金を隠していたり、収入を得ていながら申告していなかったりした場合や、同居家族の収入に関して虚偽の報告をしていた場合には、生活保護の支給が止められてしまうことがあります。
生活保護を受給するための審査はかなり厳しく行われています。
そして、支給が開始した後もなお、状況を偽り「虚偽の報告」をしていないかを確認されていると思っておく必要があります。
2.バイトなどで最低生活費を上回る収入を得た
生活保護の受給金額については各地方ごとに定められた「最低生活費」が基準になっていることは前述の通り。
当たり前ですが、最低生活費の額面を上回る収入を得た時点で生活保護受給条件を満たせなくなります。
ニートにありがちなのは、「とりあえずちょっと単発のバイトだけでもやってみようかな」と期間限定でアルバイトをするケース。
そもそもアルバイトができるくらいなら、生活保護は必要ないはずです。
そして言うまでもありませんが、アルバイト収入が、定められた「最低生活費」を超えれば生活保護の支給は停止されます。
3.ケースワーカーの指導に従わなかった
生活保護法第二十八条に以下の記載があります。
保護の実施機関は、要保護者が第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は医師若しくは歯科医師の検診を受けるべき旨の命令に従わないときは、保護の開始若しくは変更の申請を却下し、又は保護の変更、停止若しくは廃止をすることができる。
分かりやすく言えば、担当ケースワーカーの指示に従わなかった場合、ケースワーカーの権利によって生活保護支給を変更したり停止・廃止することができるということ。
ここで言う、担当ケースワーカーの指示とは、
- 口頭指導
- 文書指導
の両方を指します。
「求職活動してくださいね」
「病院に行ってくださいね」
など、ケースワーカーは受給者が自立するためにいろいろな指示を出します。
基本的に、生活保護受給中はこれらの指示に従う必要があり、従わない場合には受給が停止になることも覚えておく必要があります。
生活保護を受給するための4つのステップ
ニートの場合、仕事ができないというより、仕事をする気がないというケースの方が圧倒的に多いため、生活保護受給はほぼ無理です。
しかし、病気など別の理由で働けないとなれば、生活保護の受給が可能な場合があります。
この章では、生活保護を受給したい人が、どのようなステップで生活保護を申請すればよいか、その方法について解説します。
1.役所の生活保護担当窓口または福祉事務所に行く
まず初めに、お住まいのエリアの福祉事務所に行きます。
役所の生活保護担当窓口でも問題ありません。
生活保護の運営をするのは福祉事務所。
福祉事務所の設置がないエリアでは、役場の福祉担当課を訪ねればOKです。
このときに持参するものとしては以下の通りです。
- 通帳などお金がないことを証明するもの
- 仕事をしていないことを証明するもの
- 医師の診断書
この段階で、ニートの場合には「本当に働くことができない状況にあるのか」を厳しく問われることもあるといいます。
生活保護ではなく、他の公的制度を勧めらた、親族に援助を求めるよう言われた、と言うケースも多く、申請できずに帰るハメになる可能性もあります。
2.ケースワーカーの家庭訪問を受ける
生活保護の審査の中で最もメインとなるのが、ケースワーカーの家庭訪問。
わざわざ家庭訪問をする理由としては、
- 資産や収入のチェック
- 病気や障害の程度の確認
- 親や兄弟を含めた生活状況の確認
などが挙げられます。
家庭訪問の際、ケースワーカーが「家財を売れば生活費は十分にまかなえる」と判断すれば、生活保護の審査に通らなくなることもあります。
要は、本当に資産がないのかを確認するために家庭訪問をする、と考えて良いでしょう。
3.生活保護受給が受給できるか審査される
家庭訪問が終わると、ここからは、ニートであるあなたの預貯金残高や、家族について調査が入り、本当に生活保護が必要な状況にあるかどうかの審査がなされます。
つまり、もしもあなたが一人暮らしで生活保護の申請をしたとすると、そのことは親や兄弟にバレてしまうということ。
ニートの多くは実家暮らしですが、場合によっては一人暮らしでギリギリ生活をしているケースもあるでしょう。
「親には知られたくない」と思ってもそれは無理な話であることを知っておく必要があります。
4.審査結果が電話か郵送で通知される
原則として、生活保護の申請から原則14日以内に審査の結果が通知されます。
審査に通ればこれで晴れて生活保護が受給できるので一安心。
とは言え、生活保護を受給するということは、今後のあなたの生活を大きく変えてしまうことにもなります。
- 車や不動産などを持つことができない
- ローンは組めない
- クレジットカードは使えない
- 収入状況を報告する必要がある
- ケースワーカーが定期的に訪問する
最低限の生活を送ることができるだけの生活費は受給できるものの、その先の未来を考えるとやはり「生活保護に頼らなくても生きていける経済力」が欲しいところ。
1日でも早く就職先を見つけ、自分の力で生きていきたいものですね!
まとめ
「ニートになっても最終的に生活保護があるからどうにかなるだろう」と安易に考えている人は少なくありません。
しかし、現実はそう甘くありません。
ニートが生活保護を受給すること自体がかなり難しいこと、生活保護を受給することで多くの制限がかかることを理解いただけたら幸いです。
結局は自分の力で「働いて収入を得る」ようになる必要があることを忘れないでください。
困り果てたとき、必ず生活保護が受けられる保証などどこにもありません!
人任せに考えるのではなく、自分の人生に責任を持ち、ニートからの脱却作戦を練り行動することが何よりも重要です。
最低生活費=生活扶助(第1類+第2類) + 住宅扶助