過去の大きな失敗や苦労をどのように乗り越え、現在に活かしているのか。第一線で活躍するビジネスパーソンの成功の裏側に迫るインタビュー・「私にとっての失敗」 。
第6回目は、株式会社ベーシックの執行役員 CAOの角田剛史さんにインタビューを行いました。
プロフィール 株式会社ベーシック 角田剛史
大学卒業後、ソニーにて法人営業や経営企画を経験、在籍中にアメリカ現地法人の管理部門の責任者として3年間アメリカに赴任、赤字事業の立て直しを実行。帰国後ディー・エヌ・エーに入社し海外向け新規事業の責任者としてWebサービスを立ち上げ、その後シンガポール本社のベンチャー企業にて家具のサブスクの事業の立ち上げを行う。2018年にベーシックに入社、経営企画機能の立ち上げを行う。現在は執行役員として、経営企画を含めた全てのコーポレート機能を管掌する。Twitterアカウント:すみだ@ベーシック CAO
ー 現在の仕事内容について教えてください。
角田:経営企画、人事、広報、経理、財務、法務、総務などのコーポレート機能全てを管掌しています。ですので事業と開発以外は全て担当ということになります。それぞれの部のマネジメントはもちろん、部によっては直接実務も担っています。
ー 貴社の事業内容について教えてください。
角田:ベーシックでは提供するサービスを通じて「Webマーケティングを大衆化」していくことにより、日本の生産性・成長の拡大に寄与することを目指しています。コロナ禍の影響もあり、多くのBtoB企業が顧客獲得手法のデジタル化に取り組もうとしていますが、“知識・環境・人”の不足もありその浸透はまだまだ道半ばです。この問題を解決するべく、現在はオールインワン型BtoBマーケティングツール「ferret One」、フォーム作成管理ツール「formrun」、Webマーケティングメディア「ferret」という3つの事業を展開しています。
世の中の問題を解決するビジョンに大きく共感
ー ベーシックに入社したきっかけはなんでしょう?
角田:もともと元同僚が働いており、その人を経由して代表の秋山と食事に行ったのがベーシックを知ったきっかけです。入社を決めた理由としては大きくは2つ。1つはミッション・ビジョンへの共感、2つ目は自分の経験を活かしてベーシックに貢献できる部分が具体的にイメージできたからです。
※株式会社ベーシック ミッション・ビジョン
まず1つ目のミッション・ビジョンへの共感ですが、ベーシックは「問題解決」を繰り返すことで「今日より明日がよりよくなる」、そのような理念に基づき事業を展開しています。冒頭で触れました通り、現在はBtoB取引という市場に特化した課題解決をしていますが、この理念を持った会社であれば、今後も様々な領域において世の中をよくしていくことに貢献ができると思ったのです。それまで複数の会社で働く中で、会社のいろんな課題を解決することで会社がよくなり、その結果働いてるメンバーがイキイキと活躍するところに大きなやりがいを感じていました。これまでの自分の仕事での立ち回りとも近しいところを感じ、このビジョンに大きく共感できたんです。
そして2つ目は、このミッション・ビジョンを達成していく上で、ベーシック自体まだまだ整備できる余地を感じたということです。言い換えると、問題解決を標榜するベーシック自身が課題を抱えていると感じたのです。それまでさまざまなフェーズや規模感の会社で事業側とコーポレート側を経験してきたことから、自分であればこれからのベーシックの成長に応じて柔軟に会社の課題の解決に貢献できるかもしれないと考えました。
ー 新卒で入った大手企業を去ることに抵抗はありませんでしたか?
角田:ありませんでした。最初のきっかけはアメリカの現地法人に赴任したことです。グループとしては同じ会社でありながら、所属する法人としての規模が小さくなることで、「事業の手触り感」が圧倒的に異なることを経験しました。大企業は組織や制度がしっかりと整っていますが、その分業務が部署・人ごとに細分化されており、決められた役割をこなすという部分も少なからずあります。一度、本社以外の会社で働く経験をしたことで、潜在的に感じていたある種「大企業の窮屈さ」のようなものを、よりはっきりと自覚することになりました。
そのため、会社や事業により直接的にインパクトを与えられる環境を目指して、むしろ規模の小さい発展途上の会社で次は挑戦したい!という思いが強くなっていたのです。
成果が出ないことで、「川下り型思考」へとシフトチェンジ
ー これまでで1番苦労したこと、失敗したことがあれば教えてください。
角田:先ほど偉そうなことを言っておきながら、転職してしばらくは、とにかく会社に期待されていた成果が思うように出せなかったことですね。違う言い方をすると、ベンチャーでの働き方に全く適応できていなかったんだと思います。最初に転職する年齢としては私は決して早い方ではなかったため、知らず知らずのうちに、ある意味「大企業で働く上での筋肉」しかついていなかったのです。自走力、巻き取り力、当事者意識など大企業の中においては自分として高いと思っていたことも、ベンチャーで求められるものとは大きくかけ離れていました。結果的に、任せられた投資規模が何千万円レベルの複数のサービスが、途中で開発中止になったり、リリース後にすぐクローズしたりということが連続し、貢献できないどころか会社に損失を与えてしまいました。
ー 何千万円も抱えて事業立ち上げを任されるプレッシャーは計り知れません…。どうやってその失敗を乗り越えたのでしょうか?
角田:なぜこんなに結果が出ないのだろうと考えた時に、「この経験をしないと」「このスキルを身に付けないと」と、自分にベクトルを向けすぎていることに気がつきました。先ほど触れたように、大企業に長くいたからこそ、お恥ずかしい話ですが、自分に足りていなかったベンチャーの筋肉を遅ればせながらつけることに必死になり過ぎていたんだと思います。途中からはそのこだわりを一切捨てて、とにかく自分が既に持っていることを最大限活かして、会社や周りの人に求められることを全てやるということに集中するようにしました。自分のことについては考えるのを一旦やめたと言ってもいいかもしれません(笑)
「山登り型」「川下り型」というキャリアに対する考え方があります。山登り型とは頂上(目標)が決まっており、そこを目指して逆算的にキャリアを作ること。川下り型とは川の流れに身を任せるようにキャリアが作られるパターンのことです。私の場合、これまではどちらかと言うと山登り型でしたが、この失敗以降は、目の前に出てくる課題や頼まれごとを徹底的に乗り越える「川下り型」に切り替えました。そうしたことにより徐々に成果が出るようになり、結果的には担う役割や裁量が広がり、経験の幅も広がる形となりました。川も下り続ければ広大な海に行き着きます。最初は山を目指していたのですが、実は海を目指す方が性に合っていたということですね(笑)
ー この川下り型は今でも活きていると思いますか?
角田:そう思います。ベーシックに入社してからは、まずは経営企画機能の立ち上げを行いました。入社のきっかけのところで「ベーシックに課題があったから」というお話をしましたが、まさにその1つが、それなりの規模に会社が成長しているにも関わらず、この経営企画機能が無いことでした。そのことにより会社のあらゆるところで個別最適が起きており、会社が適切なスピードで成長しきれていないと感じました。
経営企画機能を立ち上げるのは初めてだったものの、経営企画自体は自分のキャリアの中では長かったため、それまでの知識や経験をまさにフル動員して、予実管理や内部統制の仕組み作り、全社の業務効率化などを行いました。結果的にはその立ち上げを行なっている過程で、総務、法務、広報、人事など、経営企画以外の領域でも社内から相談が舞い込むようになり、それらの解決も行なっているうちに、役割としても今のようにコーポレート全領域を見る立場となっていました。
入社当時は今のような範囲を見ることは想像していませんでしたし、仮にこれが山登り型思考で、例えば「1年後にはコーポレート全部を見る」という風に考えていたら、また過去のように、あれもこれも広く手を付ける割に成果は出ずといったことになっていたと思います。とにかく愚直に目の前の課題に向き合って解決していったからこそ、多くの人から期待をかけていただけたんだと思っています。
TRY & ERRORではなく、TRY & LEARN
ー 角田さんにとって、「失敗」とはなんでしょう。
角田:次の挑戦のための「学び」だと考えています。逆に言うと、何かに挑戦して失敗したとして、それを失敗しっぱなしにしないようにしています。なぜ失敗したのか、その失敗をしないためにはどのようにすればよかったのか、次に挑戦する際にはその失敗を踏まえてどのようにすればいいのか、それらを振り返り、あくまで学びとすることを心がけています。
今の日本企業においては、失敗したらある意味腹を切らせる文化がまだまだ多いように個人的には感じます。減給や降格、左遷など、どう責任をとらせるのかが論点になることが多いのではないでしょうか。しかし、このような文化では、当然多くの人が失敗自体を恐れ、次の挑戦が生まれにくくなってしまいます。ベーシックでは、果敢に挑戦した上での失敗はウェルカム、でも失敗したら必ず振り返り、それを学びにし、次の挑戦に繋げましょうということを常々呼びかけています。これは会社の行動規範にもTRY & LEARNという言葉で入れるほど大事にしている価値観です。
ー 行動規範に入れるほど大切にされているのですね!
※ベーシック社行動規範
角田:TRY & LEARN以外にも「GOAL ORIENTED」「TEAM SPIRIT」の2つ行動規範を設定しています。例えば、素晴らしいスキルや経験を持って成果は出せるけど、チームの輪を乱したり素行が良くないケースって、個人のパフォーマンスはいいけどチームや会社のミッションの最大化には繋がっていないと思うんです。その人らしさに加え、会社としてどういう行動をとって欲しいかが揃った上に専門性があると思っているので、ベーシックではこの行動規範を非常に大切にしています。
やりたいことが見つからなくてもいい。期待に応え続けることで適切なキャリアに結びつく
ー 今後の目標を教えてください。
角田:引き続き自分のことは特に考えず(笑)、「会社の成長に必要なあらゆることを何でもやる」に尽きますね。当面は、直接的に管掌しているコーポレート組織において会社を支えることに注力します。現在はIPOも視野に見据えながら事業運営を行っているのでとても大きなチャレンジにはなりますが、それもあくまで今後の成長のための手段であり通過点。会社の理念である、世の中のあらゆる課題を解決するべく、今後も貢献していきたいと思います。
それに加えて、これからは他社から参考にされるコーポレート組織でありたいと思っています。これは、自分たちの苦労や失敗を参考にしてもらうことで、いわゆる「車輪の再発明」のように遠回りすることなく、最短距離で成果を出せる会社が一社でも増えてほしいと思っているからです。
こうした取り組みが広がることで、各企業のコーポレート組織が強化され、その結果社会全体が効率化し、本来情熱を注ぐべきところに注げる世界になっていくという姿は、ベーシックが掲げているミッション・ビジョンと共通しています。事業やサービスだけでなく、コーポレートの面からも社会に貢献できる、そんな組織にしていきたいです。これがうまくいくと、日本はもっと元気になると思っています。そのためにもnoteやTwitterでの発信を頑張っていますので、ぜひフォローしていただけると嬉しいです(笑)
ー では最後に、転職や人生に悩んでる人へのメッセージをお願いします!
角田:目標が定まらなかったり、やりたいことが見つからなくて悩んでるという人は結構多いと思います。世間でも有名な一流起業家のように、長期で山や目標を作ってそれに沿って大成功を収めてる人を見ると、それが正解のように思えたり、そのような目標が見つからない自分に焦ることもあるかと思います。しかし、そういう人がよく目に触れるというだけであって、やり方は人それぞれでいいと思っています。私もそうでしたが、山登りがうまくいかない、目指す山が見つからないなら徹底的に川を下って海を目指してもいいと思うんです。
働くなら大企業かベンチャーかという終わらない論争もよく見かけますが、それも結局人それぞれです。私の場合はどちらも経験し、結果的にはベンチャーの方が楽しく働けると感じていますが、それも川を下る中で結果的に行き着いた結論です。とにかく人の繋がりを大切にして、その中で偶然訪れる様々な期待や依頼に対し、それまでに得た自分のスキルをフル動員して応えていく。それを繰り返すことで、自分が心地よく感じたり、楽しく感じる、自分にぴったりのキャリアが見つかることもあるのではないでしょうか。
ー ありがとうございました!
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