ブラック企業と言えば残業が多いイメージを持つ人がほとんどですが、実際残業時間はどれくらいあると危険なのでしょう。
残業は少々あるくらいならまだしも、度を超えた残業を続けていれば健康にも影響を及ぼします。
今回の記事では、ブラック企業で問題視されることの多い「残業」に注目し、
- 過労死ラインと言われるボーダーについて
- 世界水準で見た日本の残業時間
- 残業時間ごとに見られる特徴
- 80時間以上の残業が及ぼす影響
などについて解説していきます。
現在、ブラック企業と思われる企業にお勤めで、残業の多さに悩んでいる方にぜひ読んでいただきたい内容です!
月80時間の残業時間=過労死ライン
厚生労働省は、週40時間以上の時間外労働(残業)、休日労働がおおむね月45時間を超える場合に、体調を壊し病気を発症する関連性が高くなるとしています。
さらに、過労死に至る残業時間としては以下のように設定しています。
- 発症前1か月間におおむね100時間
- 発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働
つまり、過労死に至る残業時間としては、80時間以上がボーダーラインとしているのです。
ちなみに、ブラック企業に勤める人の平均労働時間は以下の通り。
▼1週間あたりの平均労働時間
30時間未満 | 30〜40時間 | 40〜50時間 | 50〜60時間 | 60時間以上 |
9.4% | 18.3% | 40.3% | 18.1% | 13.9% |
参考:連合総研「第38回『勤労者の仕事と暮らしに関するアンケート(勤労者短観)』調査結果」
この数字は平均労働時間ですが、一般的に決められている労働時間は実働8時間×週5日勤務の40時間くらいと考えられるため、これを元に残業時間を推定することができます。
- 週50時間勤務→残業が週に10時間→月の残業時間40時間ほど
- 週60時間勤務→残業が週に20時間→月の残業時間80時間ほど
このように月平均の残業時間を割り出してみると、ブラック企業に勤める人のうち13.9%が過労死ラインである80時間の残業時間を超える残業をしていることがわかります。
日本は長時間労働の国
日本人はよく働くと言われていますが、本当にそうなのでしょうか。
以下のデータは諸外国における労働時間の割合を示したものです。
▼諸外国における「週労働時間が49時間以上の者」の割合(令和元年)
出典:厚生労働省ホームページ「令和2年版過労死等防止対策白書」
週の労働時間が49時間を超える人の割合は、日本が韓国に次いで2番目に多いことが分かります。
特に男性においては、26.3%もの人が週に49時間以上働いていると回答しています。
特にイギリスやフランス、ドイツに至っては49時間以上働く人の割合がかなり低いです。
これらの国と比較すれば日本人が長時間労働をしがちである、というのはやはり正しいと言えますね。
ブラック企業勤務なら知っておきたい残業時間ごとの特徴
残業が月に○時間、などと言われてもピンとこない方もきっと多いのではないでしょうか。
この章では残業時間を以下の5つに分け、それぞれの残業時間が体や心に与える影響について解説していきます。
- 月に25時間残業するケース
- 月に45時間残業するケース
- 月に60時間残業するケース
- 月に80時間残業するケース
- 月に100時間残業するケース
1.月に25時間の残業
月に25時間の残業は一般的に見て平均的な残業時間と言えます。
以下は、17万人の社員口コミを参考に、残業時間の統計をとりまとめたものです。
▼平均残業時間推移
残業時間は2018年の時点でおおよそ28時間となっていますね。
というわけで、月に25時間という残業時間に関してはそれほど体への負担が大きいわけでもなく、至って平均的な数値であると言えます。
毎日1時間くらいの残業があると思えば、「普通」の範囲内であると言えるでしょう。
2.月に45時間の残業
月に45時間の残業とは、おおよそ週に11〜12時間程度の残業となり、日割りで考えると2時間〜3時間という計算。
実際9時出社18時退社の会社で実働8時間のところ、毎日2時間残業するとなると退社は20時。
9時から20時まで毎日働くとなれば、時間的にかなり長く拘束されるイメージですよね。
自宅に帰るのが毎日21時や22時などになれば、仕事が終わってから一息つく暇はあっても趣味に打ち込むなどの自由時間はほぼなし。
リフレッシュが難しくなり、ストレスを溜め込むようになるでしょう。
3.月に60時間の残業
月に60時間残業ともなると、いよいよ健康面が懸念されます。
週の残業時間は15時間、毎日3時間の残業と考えてみましょう。
9時に出社しても退社できるのが21時。時計が一周してしまいます。
仕事は、「ただ出社して職場にいればいい」わけではなく、仕事をする上で多かれ少なかれストレスも溜まるのが普通です。
拘束時間が長ければ、体力的に疲れますし、精神的にも疲弊してしまうでしょう。
4.月に80時間の残業
過労死ラインと言われる月に80時間の残業については、週20時間、毎日4時間もの残業となるため、かなり負担が大きいです。
9時出社で退社が22時。
帰宅するのが23時を過ぎてしまうケースも多いでしょう。
一人暮らしの場合、帰宅後は食事を摂るにも時間的余裕がなく、コンビニ弁当などに頼りがちになってしまいます。
ごく限られた期間であればまだ我慢できても、日々4時間残業を当たり前に続けていれば体は持ちません。
ブラック企業では80時間を超える残業を強要する会社もありますが、さらに悲惨なのはその残業代さえ支払われないケース。
タダ働きで体を壊すなんて、まさに泣きっ面に蜂です。
5.月に100時間の残業
考えるのも恐ろしいですが、月に100時間の残業についても考えてみましょう。
月に100時間の残業は週に25時間ほど。
毎日おおよそ5時間もの残業時間がある計算になります。
9時に出社して定時が18時なのにも関わらず、退社時間は23時。
最悪の場合終電を逃して。自宅に帰る術を無くしてしまうケースもあります。
家に帰って食事をしてお風呂を済ませばもう1時を過ぎており、慌てて眠りにつきまた翌日の激務に戻る‥。
このサイクルで毎日働いていれば、健康な人でも体調を壊して当然です。
中には精神的に病んでしまい、会社に行こうとしても気分が悪くなりどうしても出社できない、などの症状が現れる人も少なくありません。
残業時間ゼロのブラック企業の実態
ブラック企業の中には、残業時間ゼロの会社が存在します。
残業がないならそれは素晴らしいこと!と思うかもしれませんが、そうではありません。
ここでは、残業時間ゼロの超ブラック企業とはどのような会社のことなのかを解説していきます。
1.仕事は所定時間内に終わらせるのが基本
残業時間がゼロである理由は、「会社が残業を認めていない」からです。
しかし、蓋を開けてみれば毎日社員が遅くまで残業をしています。
どういうことかというと、残業するのは「個人の勝手であり、会社は認めていない」ということ。
よって、会社は残業を強制していないから賃金も支払う必要がない、という解釈なのです。
このようなブラック企業は声を大にして「残業はない」と言い張ります。
2.自主的に早出・残業をしている
仕事が終わらないからという理由で社員が定時よりも早く出社したり、残業したりする場合にがあります。
しかし、ブラック企業の中にはこれらを全て「社員が勝手にやっていること」だと主張し、残業として認めることをしないところもあります。
- お客様とのアポイントが定時内で取れない
→調整できなかった社員の責任 - 仕事が多過ぎて終わらないから早出した
→仕事のやり方に問題がある - 納期に間に合わないから残業して資料をまとめた
→計画的に動かなかった社員の責任
このように、言い方に工夫すれば全ての時間外労働を「社員の責任」にすることは可能です。
ブラック企業はこのように屁理屈を並べ、頑なに残業手当を1円も支払わないなどの確固たる姿勢を貫くのです。
3.自宅やカフェなどでの業務
結局残業がなぜ発生するかというと、
- 時間外にしかできない業務がある(取引先の都合など)
- 仕事量が多くて定時までに終わらせることができない
以上の2つのうちのどちらかに該当している場合がほとんどでしょう。
特に、ブラック企業は、1人の社員に対して明らかに無理がある過剰な業務量を任せる傾向があります。
当然社員は仕事を終わらせることができず、残業をする他ありません。
このときに、「仕事を持ち帰り、自宅やカフェなどで作業をする」ことを許可するブラック企業は割と多いです。
許可するというよりももはや推奨する企業まであるほどです。
この狙いは、
- タイムカードを切って退社後に作業しても残業にはならない
- 誰が何時まで業務をしたか記録が残らない
の2点。
つまり、勤務時間内に終わるはずのない膨大な業務を社員に任せ、定時でしっかりと退社させることにより、社員を社外で残業せざるを得ない状況に追い込むのが狙いです。
ブラック企業で月に80時間残業したら起こること
ここまでの内容で、残業時間が何時間を超えると負担が大きくなるのかはおおよそイメージがつくようになったのではないでしょうか。
最後に、ブラック企業で80時間労働をしている人の口コミなどから、実際に起こった影響についてまとめておきます。
1.体調不良
80時間を超える残業をしている人の多くは、何らかの健康面への影響を感じています。
その多くは
- 食欲不振
- 吐き気
- 頭痛
- 寝不足
などですが、いずれも体力面と精神面に負担がかかりすぎていることで引き起こされます。
人間疲れ過ぎるとかえって眠れなくなる、ということが多く、「少しでも長く睡眠時間を取らなきゃ」と思っても、そのプレッシャーが邪魔になり余計に眠れず不眠に苦しむ人は多いです。
ものすごく疲れているのに眠りが浅くなり早く目が覚めてしまうので、結局常にかなり睡眠不足状態になる。
休みの日に死んだように寝ているだけで家族が心配する
お腹が空いていても食べたいものが考え付かず結局食べずに寝てしまう。3ヶ月で5キロも痩せてしまい健康診断で「低体重」と言われた。元気も出ずやる気などもちろん出ない。
2.精神疾患
体力面だけでなく精神面にも大きな負担となるのが80時間を超える残業。
ブラック企業に勤め、何らかの精神疾患を煩い退社する人は後をたちません。
- 適応障害
- うつ病
の2つは、ブラック企業勤務者が診断されることの多い病名です。
精神面に異常をきたしてしまうと、もはやその会社で働くことを体が拒否するようになるため、さまざまな拒否反応を起こしてしまいます。
ある日いきなり通勤時に会社の前で吐き気をもよおしその場から動けなくなった。その日は病院に行き仕事を休んだが、翌日も会社が近づくにつれて激しい吐き気。結局心療内科で「適応障害」と診断された。
営業職のため会社携帯を持たされているが、休みの日も容赦なくかかってきて対応に追われる。残業は月80時間を超え、休日出勤も頻繁。あるときから会社の携帯が家でも常に鳴っている幻聴に悩まされるようになり、そこから悪化してうつ病を発症した。
3.仕事の効率が下がりさらに残業が増える
悪循環そのものですが、80時間もの残業をしていれば、体も心も疲れ切ってしまうため業務の効率は非常に悪くなります。
健康な状態で睡眠も食事もバッチリ取っている人とは比較にならないほど効率が下がり、効率が下がることにより、さらに残業を増やしてしまうのはブラック企業あるあるです。
残業を少しでも減らしたいと業務効率化を図りたいけど、体が疲れ過ぎていて何も考えられない。毎日8時から23時まで会社にいるけど、こんなに疲れていなかったらどんなに遅くても21時には退社できているはず。とにかく頭が回らず仕事が捗らない。
食欲不振や寝不足が続き疲労レベルが限界。会社にいてもメールの処理にさえ時間がかかり、何時間もぼんやりしてしまう。早く帰りたいと思う気持ちはあるけれど体と頭がついてこず、毎日終電ギリギリの生活。
まとめ
今回は、ブラック企業の残業時間に注目し、具体的に残業時間がどのくらいあれば負担が大きくなるのかについて解説しました。
80時間は過労死ラインということを頭に入れるのはもちろん大事ですが、それ以前に45時間、60時間の残業でも十分健康被害を引き起こす可能性があることも覚えておきましょう。
特に、ブラック企業では残業時間が長い上、その残業手当が支払われていないケースも多いです。
今あなた自身がおかれている状況が適切であるか、今一度客観的に判断してみましょう。
「皆頑張っているから、自分もやらなきゃ」と自分を追い詰めていると、知らないうちにどんどん負担が溜まり、爆発してしまう可能性もあります。
最も大切なのは、健康でいること。
そのためにも、度を超えた残業時間がある場合には手を打つ必要があります。
あなた自身の将来のために、今一度現状を見つめ直してみてくださいね!