過去の大きな失敗や苦労をどのように乗り越え、現在に活かしているのか。第一線で活躍するビジネスパーソンの成功の裏側に迫るインタビュー・「私にとっての失敗」 。
第5回は、株式会社ラフール 経営戦略室 広報PRの大澤直人さんにインタビューを行いました。
プロフィール 株式会社ラフール 大澤直人
大学卒業後、広告代理店に入社。営業から広告出稿、お客様対応まで幅広く担当。2年ほど勤務したのち、2014年 PR会社に転職。2018年から広報・マーケティングのフリーランスを1年経験し、2019年 現在の株式会社ラフールに広報・マーケティング担当として入社。現在は広報PR全般ブランディングなど幅広い分野で活躍中。Twitterアカウント:おーさわ@ラフール広報PR/ブランディングの人
ー 現在の仕事内容について教えてください。
大澤:マーケティング業務を経て、現在は広報PR・ブランディング業務の専任として主にメディアとのリレーション構築、取材対応、プレスリリースの執筆、ブランディング設計などに携わっています。
ー 貴社の事業内容はどういったものになりますか?
大澤:メンタルデータテック®︎(メンタルヘルス×テクノロジー)を活用し、組織の課題、非財務情報(ESGへの取り組み)を可視化・改善、個人のセルフケア・行動変容を促進する、人的資本/ウェルビーイング経営支援クラウドツール「ラフールサーベイ」を運営しています。
定期的に従業員にサーベイを実施し、分析、課題特定、改善立案、対策までをワンストップで行い、生産性向上と離職防止を通し、組織改善につなげることができます。
広告代理店・PR会社からメンタルヘルス領域へ転身したワケ
ーラフールに入社される前は全く違う業界で活躍されていましたが、なぜ未経験でメンタルヘルスの世界へ飛び込んだのでしょうか?
大澤:プロジェクトを組んで一緒に働いていた他社の方が、過労で亡くなったのが大きなきっかけです。深い交流はありませんでしたが、何度か一緒にお仕事をさせていただいたので、当時はとてもショックでした。この時ふと自分の周りを見渡すと、過労で疲れて休職しそのまま復職されない方や精神をすり減らしながら労働している方が多く、次第にメンタルヘルス業界への興味関心が大きくなっていました。
そんな時にラフールと出会い、「これからメンタルヘルスを軸とした新しいサービスを出すよ」と言われました。ちょうどその頃からメンタルヘルスをケアすることはとても大事だと世の中にも認識され始めたころで、自分自身も興味がある分野、かつ事業会社のマーケティング・PRとしてサービスを成長させることに大きな魅力を感じ、入社を決めました。
ー未経験の業界はとても大変だったのではないでしょうか。
大澤:これまでいろんな業界の企業様をサポートしてきたので特に抵抗はありませんでしたが、事業会社の組織体制の難しさには直面しました。弊社、ラフールサーベイを展開する前は研修などを提供している会社で、今イメージするテックカンパニーとは異なり営業主体の会社だったんです(笑)ただ研修を提供するのではなく、個人も組織も変えられるもっと本質的なサービスを作ろうと大規模な事業転換が2018〜2019年頃にあり、そのために管理職メンバーを多く採用したのですが、当時第一線で活躍していた営業メンバーとの衝突は避けられず。会社やサービスを思う気持ちが強いからこそ起こってしまうんですけどね…。
この事業転換や組織改革が理由で退職者が出てしまい、、広報・マーケティングの垣根を超えて行う仕事も増えて大変でしたが、これが良い教訓になり社内の人事制度も整いましたし、今となってはいい苦労の経験だったと思います!
ミスを隠したことで会社に大きな損失
ー これまでで1番苦労したこと、失敗したことがあれば教えてください。
大澤:新卒1年目の終わり頃、ミスを隠し続けたことで会社に大きな損害を与えてしまいました。広告代理店としてお客様が打ち出したいイベントに向け、メディアさんとスケジュールを組んで進める必要があったのですが、他業務の忙しさもあり進められていないことに気がつきました。お客様や社内から「あの件どうなってますか?」と連絡はあったのですが進められていませんとは言えず、「調整中です」と答えてしまったんです…。一度回答すると後に引けなくなり、報告するタイミングを見失ってズルズルと1週間が過ぎた頃、痺れを切らしたお客様が代表電話に電話。当時の部長が対応したことで自分のミスが発覚し、こっぴどく叱られました。
ーそれはどのようにして解決したのでしょうか?
大澤:まず、社長や部長がお客様の企業に直接訪問し謝罪。その後のお仕事は全て上長が引き継ぎ無事に対応できたものの、締切が近い枠に緊急で広告を入れるにはプラスで料金を支払う必要があり、これはもちろんミスを起こしたこちらが払うことになります。会社のお金もそうですが、企業イメージをも毀損する大きな損害を与えてしまいました…。この出来事は今でも思い出すと冷や汗が出るほどトラウマですが、自分の仕事への価値観を大きく変える出来事になりましたね。
ーこの経験がどのように大澤さんの価値観を変え、今に活きているのでしょうか?
大澤:自分の仕事はいろんな人が関わっていて、自分のミスは「大澤のミス」ではなく「所属企業のミス」に直結することに気づくことができました。当時の営業スタイルは自分で顧客を見つけ、営業し、広告出稿後までを一気通貫でサポートしていたことから、全部1人で完結できると勘違いしていたんです。でも、この件の対応のために経営陣から総務、経理、サポートなどたくさんの部署に動いてもらい、「自分はどれだけ多くの人に支えられているのか」を痛感しました。そしてこの時、自分よりも「ちゃんと管理もできない企業」「社員がミスをごまかす企業」と矛先が全て会社に向いたことで、1人ひとりが会社の看板を背負っているんだと知り、以来ずっと心に刻んでいます。
また、いい意味で「全部自分でやらなくてはいけない!」と思わなくなりました。全てを自分が抱えることでキャパオーバーになり、お客様やメンバーに迷惑をかけたら本末転倒です。もちろん最善を尽くすために調べたり行動するのは大切ですが、その上で任せられるところは他のメンバーに任せる、頼れる人に頼るなど、現在は周りをうまく巻き込み一緒にやり遂げていくようにしています。
そこに学びがあるかぎり、失敗は失敗じゃない
ー大澤さんにとって「失敗」とはなんでしょう。
大澤:結論、失敗は失敗じゃないのではないでしょうか。広告代理店での過ちも当時は色んなところに迷惑をかけてしまい総じて辛かったのですが、今振り返ると全て自分の糧になっているなと感じます。そう思える理由は、失敗から学びを得ているからだと思います。失敗なんて誰も好きじゃないですし、咎められることが怖い気持ちも分かりますが、痛みや辛さこそみなさんを豊かにすると思うので極端に失敗を恐れず「とりあえずやってみよう!」と思えるマインドが大切だと思います!
ー失敗を恐れないマインドを持つのは簡単じゃない気もします。どうやったら手に入るのでしょうか?
大澤:確かに「失敗するのが怖いです」と言う方が最近多い気がします。個人的に2つアプローチ方法があると思います。まず、人生もキャリアも完璧なんてないんですから自分が思い描く理想に近づくためのきっかけ、学び、成長プロセスの中でミスや失敗が起こることは当たり前だと自分に言い聞かせること。そう思えるようになると、気が楽になり一歩を踏み出せたりするものです。
2つ目は、自分以外のメンバーがミスや失敗をしたら積極的にフォローしていくこと。新卒の時のミスも立ち直れたのは、周りからの接し方が大きく関係していると思っています。叱られながらも「大澤は何かやらかすと思ってたよ(笑)」「勉強になってよかったね」とフォローされることが励みになり、そこから失敗に寛容になれたので。そういった環境に自ら身を置くことで自然と怖くなくなると思います。
ー内と外どちらからのアプローチですね、おもしろい!
偶然の出来事が繋がり、1つのキャリアのレールになる
ー 今後の目標を教えてください!
大澤:会社としては、これから新たなサービスの展開も控えているので全部署で頑張りつつ、アウターブランディング・インナーブランディングの両軸で強化を図れるよう尽力していきたいと思っております。
個人的な目標としては、そこまで明確なキャリアの軸があるわけではなく、自分が何かをやりたい時にスキルやお金がないことで諦めたくないと思っているので、そのための自分磨きは継続していきたいです。それは広報PR領域に限らず、それに付随したスキルを身につけることで市場価値は上がっていくと思うので、勉強は怠らず挑戦していきたいです。
ー では最後に、転職や人生に迷っている方へのメッセージをお願いします。
大澤:私が好きな言葉に「キャリアの8割は偶然の出来事によって形成される」という言葉があります。これはプランドハップンスタンス理論からきていて、「キャリアというものは偶然の要素によって左右されるものが多く、偶然に対してポジティブなスタンスでいる方がキャリアアップにつながる」という考え方のことです。転職もキャリアも人生も必ず計画的にいくとは限りませんが、途中で直面する壁や出来事がうまく絡み合うことで自分にピッタリなキャリアが見つかると思うんです。だから、上手くいかないからと下を向かず、前向きに楽しんでみてください!
ー ありがとうございました!
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