求職中に職業訓練を受けると、今後の仕事に役立つ資格を得ることも可能です。では、具体的には何を学べて、どんな資格の取得を目指せるのでしょうか?
職業訓練とは?
職業訓練の正式名称は「公的職業訓練」。利用するには、ハローワーク窓口で手続きをおこない、書類選考および筆記試験や面接を受けるシステムとなっていることから、「ハロートレーニング」とも呼ばれます。
職業訓練は大きく2種類に分けられる
職業訓練は、失業保険を受給している求職者を主な対象とする「公共職業訓練」と、失業保険を受給できない求職者を主な対象とする「求職者支援訓練」の大きく2種類に分けられます。「失業保険を受給できない求職者」とはどういうことかというと、たとえば個人事業主や主婦、主夫、ニート期間が長かった人、就職先が決まらないまま学校を卒業した人などが挙げられます。
「公共職業訓練」「求職者支援訓練」ともに基本的には無料で受講できますが(ただしテキスト代などは負担となる場合があります)、スキルアップ目的で受講を希望する在職者などは、“有料コースのみ受講可”とされています。
そのほか、「公共職業訓練」「求職者支援訓練」には以下のような違いがあります。
公共職業訓練 | 求職者支援訓練 | |
主な対象者 | 失業保険の受給対象者(前職で、「所定労働時間が週20時間以上」「見込みの雇用期間が30日以上」の2つの条件を満たして働いていた人) | 失業保険の受給資格がない人(主夫、主婦、個人事業主、ニート期間が長かった人、就職先が決まらないまま学校を卒業した人など |
受講費用 | テキスト代などを除いて無料 | テキスト代などを除いて無料 |
訓練期間 | 3か月~2年 | 2か月~6か月 |
実施期間 | ・国(ポリテクセンター)・都道府県(職業能力開発校)・民間事業者(都道府県が委託) | 民間事業者(厚生労働大臣が認定) |
コース | ・施設内訓練(機械、電気、建築、塗装、造園、印刷、ファッション など)・委託訓練(医療、介護、保育、美容、財務、総務、不動産、Webデザイン、プログラミング など) | ・基礎コース(パソコンスキル基礎 など)・実践コース(医療、介護、保育、美容、財務、総務、不動産、Webデザイン、プログラミング など) |
受給できる可能性のある給付金 | ・失業手当・通所手当(実費、上限あり)・受講手当(1日500円×最大40日分) | ・職業訓練受講手当・通所手当(実費、上限あり)・寄宿手当 |
職業訓練受講者が受けられる給付金とは?
続いては、上記の表に記した「受給できる可能性のある給付金」についてみていきましょう。
職業訓練は、どのコースも平日に日中にカリキュラムが組まれていることから、訓練を受けながら働いて生活費を稼ぐことは難しいです。そのため、受講中は条件を満たせば給付金を受けられます。
失業手当
前職で雇用保険に加入していた場合、支給されます。
通所手当
職業訓練実施機関までの通所経路に応じた所定の額が支給されます。ただし、上限額が設定されています。また、もっとも経済的かつ合理的と認められる交通手段・経路に対して支給されます。
受講手当
公共職業訓練を受けた日に、1日につき500円が昼食代として支給されます。
職業訓練受講手当
求職者支援訓練を受ける人のうち、以下の要件を満たしている人に対して、月額10万円が支給されます。
寄宿手当
職業訓練を受けている間、家族と離れて生活する場合に支給される手当で、月額10,700円が支給されます。
給付金以外にも無料で利用できるサービスがある
職業訓練受講者は、要件を満たせばこれらの給付金を受給できるほか、職業紹介・面接対策などの就職支援も無料で受けられますし、就学前の子どもを無料で預かってもらえる託児サービスを利用することも可能です。
職業訓練のコースによっては託児サービスが用意されていないこともありますが、その場合は、職業訓練の受講が「保育が必要な事由」に該当するため、認可保育園に預けるという選択肢もあります。
職業訓練を無料で受けるための条件とは?
職業訓練は誰でも無料で受けられるというわけではなく、いくつかの要件を満たしたうえで、筆記試験・面接試験に合格する必要があります。どんな要件を満たしている必要があるかというと以下の通りです。
公共職業訓練を無料で受けるための条件
・自己都合退職の場合、失業保険の給付期間が1/3以上残っている
・ハローワークから職業訓練が必要と認定されている
・過去1年に退校処分を受けていない
・過去に公共職業訓練を受けたことがある場合、前回の公共職業訓練終了から1年以上経過している
求職者支援訓練を無料で受けるための条件
・ハローワークに求職の申し込みをしている
・雇用保険受給資格がない
・労働の意思と能力がある
・ハローワークから職業訓練が必要と認められている
職業訓練を受講するメリットは?
続いては、職業訓練を受講するメリットをみていきましょう。職業訓練を受講する一番のメリットは、なんといっても「就職に活かせるスキルを無料で身につけられる」ということでしょう。そのなかでも人気が高いコースを以下に列挙します。
パソコン系
基本的なパソコン操作はもとより、Office(Word・Excel・PowerPoint)の使い方やMOS(Microsoft Office Specialistの略称)の試験対策までレクチャーしてもらえます。
Web系
HTMLやCSSを使ったWeb制作、イラストレーターやフォトショップを使ったWebデザイン、JAVAプログラミング言語を使った、Androidアプリケーションの開発などについて学べます。
経理系
売上・経費・利益の管理、税金・給与・社会保険料の計算、勘定科目ごとの集計ができるようになるだけでなく、決算書類(試算表・貸借対照表・損益計算書など)の作成方法なども学べるため、就職に大変有利となります。
金融系
ファイナンシャル・プランニング技能士(2・3級)の試験対策、宅建士(宅地建物取引士)の試験対策などの講座を受けることで、銀行・保険・証券・不動産業界への就職が有利になります。
機械・電気系
さまざまな業界で使われる荷役機械・建設機械の使い方について学べます。これらのスキルを習得すると、主に建設・土木現場や配送業などに就職しやすくなります。
介護・福祉系
3か月の職業訓練では「介護職員初任者研修」、6か月の職業訓練では「実務者研修」がおこなわれます。研修終了後は、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などに就職しやすくなるでしょう。
美容系
ネイリストやエステティシャンに必要な実技スキルに加え、接客マナーやコミュニケーションのコツについても学べます。
これらのコースを受講して、就職に有利な資格取得を目指すこともできますが、職業訓練のコースは無数にあるため、取得を目指せる資格数もかなりの種類となります。
職業訓練を受講するデメリットは?
職業訓練を受講することそのものにデメリットはありませんが、希望する講座を100%受けられるわけではないのは難点といえます。人気のコースは受講希望者が多いため、筆記試験および面接の結果、受講が認められないこともあるのです。
また、運よく受講できたとしても、受講態度が悪いと退校となるため注意が必要です。授業をしっかり聞いていたとしても、遅刻や欠席、早退が多ければ、退校となるたけでなく、給付金の返還義務が生じるので、けがや病気などのよほどの理由がない限り、きちんと参加するようにしましょう。
職業訓練を受講するにあたっての注意点
職業訓練を受けるにあたって注意すべき点はいくつかあります。
続けられるコース、興味のあるコースを選ぼう
職業訓練は短いコースでも数か月にわたっておこなわれるため、興味がないコースを選ぶと、通うことが精神的な負担となるでしょう。その結果、退校となれば給付金変換義務も生じるので、最後まで続けられるものを選びましょう。
職業訓練受講期間は、失業保険認定日にハローワークに行かなくていい
失業保険を受給するためには、基本的には4週間に1回の「失業保険認定日」にハローワークに行って手続きすることが必要です。しかし、職業訓練受講期間に限っては、失業保険認定日に支給手続きのためにハローワークに足を運ぶ必要がありません。
職業訓練を上手に活用すればその後のキャリアの幅が広がる
職業訓練を「やりたい仕事が見付かるまでのつなぎ」ととらえるか「キャリアアップのためのスキルを身につけるチャンス」ととらえるかはその人次第。
しかし、生活費のサポートを受けながら無料で知識やスキルを身につけられる機会などそうそうないので、最大限活用するのが得策。前の仕事を辞めた直後は、「しばらくはのんびりしたい…」と思うこともあるかもしれませんが、金銭的にも将来損をしないために、自分の給与水準を上げるための努力は惜しみたくないものですね。
・世帯の収入が月25万円以下
・世帯の金融資産が300万円以下
・現在住んでいる場所以外に土地や建物を所有していない
・すべての訓練実施日に出席している
・同一世帯内に給付金を受給して職業訓練を受けている人がいない
・過去3年以内に不正行為によって特定の給付金を受けたことがない