失業保険の給付金を受け取るためには就職活動が必要と聞き、どの程度行えばよいのか分からない人もいるでしょう。失業手当を受けるために、どれくらい就職活動をするべきかを解説します。失業手当をもれなく受け取りたい人は、ぜひ参考にしましょう。
失業保険の役割と手当支給の仕組み
まずは、失業保険の役割と手当支給の仕組みを解説します。前提となるルールを知ることで、思わぬミスを防ぐことができるでしょう。
雇用保険と呼ばれる公的保険制度
失業保険は、厳密には『雇用保険』と呼ばれる公的保険制度のことを指します。
雇用保険とは、労働者が何らかの事情で失業や休業をした場合に、生活と雇用の安定のために被保険者に手当を給付する制度です。給付を受けられる期間は、離職日の翌日から1年以内、または次の就職先を見つけるまでです。
雇用保険は強制保険制度のため、会社員として働いているなら誰もが加入しています。保険料は毎月の給料から天引きされる形で支払っているので、普段はあまり意識することはないかもしれません。
失業中は失業給付金が支給される
失業給付金を受け取るには、失業している状態であることと、過去2年間のうち1年以上雇用保険に加入していることが条件です。失業状態の定義は、『働く意思と能力があるにもかかわらず、職に就くことができていない状態』を指します。
そのため、けが・病気ですぐに働けない人や、出産・育児によりすぐには就職が難しい人は失業中とはみなされず、失業給付金を受け取ることはできません。ただし、条件によっては受給期間の延長申請が可能です。
なお、失業保険の給付額は、離職前の給与の約半分から8割となっており、年代ごとに上限額が設定されています。下限額は全年代一律ですが、上限額は年齢が上がるにつれ上昇します。
失業給付金はハローワークへ申請
失業給付金を受け取るには、ハローワークでの手続きが必要です。申請に必要な書類は、以下の通りです。
- 離職票
- 本人確認書類
- 印鑑
- 写真2枚(縦3×横2.5cm)
- 個人番号が確認できる書類(マイナンバーカードなど)
- 失業給付金の振込先銀行口座情報
上記をハローワークに持参し申請を行ったら、7日間の待機期間を経て失業状態にあることを確定させます。その後、雇用保険受給説明会に参加し、『雇用保険受給資格者証』と『失業認定申告書』をもらいましょう。
それ以降は、4週間ごとに設定された認定日にハローワークに行き、失業認定を受けることで失業給付金を受け取れます。認定日にハローワークに行かなかったら、失業給付金を受け取れないので注意しましょう。
失業保険の手当を受けるには就職活動が必要
失業保険の手当を受け取るには就職活動が必要ですが、どの程度活動すればよいのでしょうか?就職活動にフォーカスを当てて解説します。
就職しようとする積極的な意思が支給条件
失業手当の給付は、失業状態にあることが条件です。ここで重要なことが、働く意思があるにもかかわらず、就職できていないと定められている点です。
つまり、転職先が決まっている人や、そもそも就職する意思がない人は失業手当を受け取ることはできません。就職する意思があることが条件なので、失業手当受給者には就職活動を行うことが求められます。
認定日までに一定回数の求職活動が必要
失業給付金を受け取るためには、基本的に前回の認定日から次回の認定日まで2回以上の求職活動が必須となります。
ただし、初回認定日までに限っては、1回の求職活動でOKです。7日間の待機期間明けに参加する『雇用保険受給説明会』が、1回分とカウントされるためです。
なお、自己都合などで退職して3カ月間の給付制限がかかる場合は、初回認定日までに3回以上の求職活動が必要となる点には注意しましょう。雇用保険受給説明会が1回分とカウントされるので、実質的に必要な求職活動は2回分ということになります。
また初回認定日は、待機期間明けの雇用保険受給説明会の日ではないという点もポイントです。待機期間が終わる日は受給資格が決定する日であり、そこから初めての認定日が初回認定日になります。
求職活動実績の作り方
求職活動の具体的な内容を解説します。求職活動の定義が分からないと、給付を受けられない恐れがあるので、しっかりと確認しましょう。
求職活動実績の具体例
求職活動と認められる実績の具体例は、以下の通りです。
- ハローワークでの職業相談、職業紹介
- 求人への応募(面接、筆記試験の受験含む)
- 募集をかけている企業への問い合わせ
- 公的機関が行う企業説明会への参加
- 就職支援講習やセミナーへの参加
- 再就職のための国家試験や資格の受験
いずれも、実態を伴う活動であることが分かります。つまり、求人情報を閲覧しているだけや、知人に紹介依頼をするといった行為は求職活動とは認められないので、注意しましょう。
職業相談のみでも実績として認められることも
失業者の中には、次にやりたいことがあり、勉強などの準備期間の生活資金として失業手当の受給を検討している人もいるかもしれません。その場合、むやみに企業に応募して選考が進んだり、内定が出てしまったりするのは不本意でしょう。
その場合は、ハローワークで職業相談を行うことをおすすめします。職業相談では求人の紹介をしてもらったり、履歴書の添削をしてもらったりできます。その場で求人に応募する必要はなく、「検討します」と持ち帰っても問題ありません。
職業相談でも求職活動の実績として認められるので、上記のような事情がある人は覚えておくとよいでしょう。
失業認定で基準を満たせないとどうなる?
失業認定の基準を満たせなかった場合に起こることを解説します。特にペナルティはないものの、受給期限には注意が必要です。
手当の給付は先送りされる
失業認定の基準を満たせない代表的なケースは、求職活動の回数不足と、認定日にハローワークに来所できないことでしょう。
いずれの場合も、その期間は失業状態ではなかったとみなされ、手当の給付は先送りにされます。一月分の給付が先送りになるだけで、もらえる金額が減額・消滅することはないので心配はありません。
また、認定日の変更は、特別な理由がない限りできないので注意が必要です。ただし、体調不良などやむを得ない理由があるときは、必要書類を提出することで認定日の変更をしてくれます。
認定日変更の必要が出たときはハローワークに問い合わせをし、指示を受けましょう。
受給の有効期限に注意
何らかの理由で、失業認定の基準を満たせなかった場合は給付が先送りになりますが、いつまでも先送りにできるわけではありません。失業保険は、離職日の翌日から1年以内に受給を完了する必要があるためです。
ここで注意が必要なのは、受給期限は申請のタイミングにかかわらず、離職日の翌日から1年間であることです。つまり、申請のタイミングが遅れれば、期限内に受給が完了しない可能性があります。
特に自己都合で退職した人は、初回認定日までに約3カ月間の給付制限期間が発生するので、速やかに申請を行うことをおすすめします。
条件を満たせば受給期間延長も可能
失業保険の受給期間は原則1年間ですが、受給期間中に下記のような理由で30日以上就職ができなくなった人は、受給期間の延長ができます。
- ケガ・病気
- 妊娠・出産・育児(3歳未満)
- 親族の介護
受給期間を延長できる期間は、最大3年間です。つまり、トータルでは最大4年間の受給期間を得られます。ただし、この場合も申請が遅れれば、期限内の受給ができなくなる可能性があるので早めに行いましょう。
就職活動に成功した後の手続き
晴れて就職に成功した場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか?就職後に行う手続きを解説します。
条件を満たすと就職促進手当を受給可能
失業保険の受給期間中に就職に成功し、一定の条件を満たした場合、『就職促進手当』を受給できます。就職促進手当にはいくつか種類がありますが、代表的なものは『再就職手当』と『就業手当』でしょう。
両者の違いを簡単に説明すると、再就職手当は正社員採用が決まった場合に支給されるもので、就業手当はパートやアルバイトで就業した場合にもらえる手当です。
また、再就職手当を受給後、新しい職場に6カ月以上雇用され、かつ1日当たりの賃金が前職よりも低い場合にもらえる『就業促進定着手当』もあります。
再就職手当の申請方法
再就職手当を受給するには、失業手当の支給日数が所定給付日数の1/3以上残っていることや、1年以上の雇用が確定していることなどの条件があります。
申請方法は以下の通りです。
- 就職先から『採用証明書』をもらい、ハローワークに提出する
- ハローワークから『再就職手当支給申請書』をもらう
- 申請書について再就職先から証明を受ける
- 証明を受けた申請書と『雇用保険受給資格者証』をハローワークに提出する
なお、再就職手当の申請期限は、就職後初出勤日の翌日から1カ月以内です。うっかり忘れないように、就職後はすぐに申請することをおすすめします。
就業促進定着手当の申請方法
受給資格に当てはまっているなら、『就業促進定着手当』も申請しましょう。申請に必要な書類は以下の通りです。
- 就業促進定着手当支給申請書
- 雇用保険受給資格者証
- 就職日から6カ月間の出勤簿の写し(事業主から原本証明を受けたもの)
- 就職日から6カ月間の給与明細または賃金台帳の写し(事業主から原本証明を受けたもの)
就業促進定着手当の申請期限は、再就職後6カ月が経過した日の翌日から2カ月間です。半年分の出勤簿や給与明細を準備する必要があるので、早めの準備が必要でしょう。
就職活動は失業保険受給に必須
失業保険を受給するには、働く意思があることが重要な条件となっています。そのためには、次回の認定日までに2回以上の就職活動の実績が必要です。ハローワークで職業相談をするだけでも、実績として認められます。
なお、就職はしたいものの、自分のスキルや経歴に自信がない人もいるでしょう。そんなときは、インターンシップに参加することをおすすめします。
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