スキルや経験を重視する中途採用市場では、現職あるいは前職と異なる職種に転職するのは難しいとされています。しかし、営業職は未経験でも転職しやすい傾向にあります。本記事ではその理由を解説するとともに、おすすめの業界についてまとめます。
営業が未経験でも転職しやすい理由
そもそも、なぜ営業職は他の職種に比べて転職しやすいといわれているのでしょうか。まずは未経験でも営業に転職しやすい理由を解説していきます。
求人の数が多い
営業職は『顧客との契約を取り付ける』という、会社の利益に直結する仕事を担うことから、商品やサービスを提供する企業にとって欠かせない存在です。そのため、市場の動向や景気に関係なくさまざまな企業から求人が出ています。
近年はIT技術の発達によって事務職の仕事量が減少する一方で、営業職の仕事は量・内容ともにほとんど変わっていません。その結果、相対的に営業職の求人が増えているように見えるということもあるでしょう。
また、日々業務に励んだとしても簡単に契約が取れるわけではない上、ノルマを達成できなければ上司や先輩から非難されることもあるのが営業職です。人によっては精神的な負担が大きいため早期離職するケースも多く、常に人手不足の傾向にあるといえます。
このような理由から、営業職は求人の数が多いといわれているのです。
入社後に教育がしやすい
営業職が取り扱う商品やサービスは、企業によって異なります。前職が応募先と近い業界に属していれば、培った経験や知識を生かし、『即戦力』として活躍できるでしょう。
また、営業職は現場での経験を通じて知識や手法を身に付けることが多い職種です。企業としては事前の教育に力を注ぐ必要はなく、実際の営業活動に同行してもらったり、あらかじめ用意したマニュアルをもとに現場に出てもらったりしたほうが効率的といえます。
このような『入社後の教育のしやすさ』が、営業職が未経験でも採用されやすい理由として挙げられます。
参考:営業職に向いている人&向いていない人の特徴や性格10選|成功者の共通点も解説
知っておきたい営業の知識
営業職への転職を検討する前に、最低限知っておきたいことがいくつかあります。現在転職活動中、あるいは転職を検討している人は、これから紹介する内容を把握しておきましょう。
営業の種類
営業職はターゲットとなる顧客・営業スタイルなどのさまざまな要素によって、いくつかの種類に分けられます。
例えば、個人を対象に営業活動を行う場合は『個人営業』、企業(法人)を対象に営業活動を行う場合は『法人営業』と呼ばれます。取り扱う商品・サービスの単価が大きく異なるため、個人営業に比べて法人営業のほうが契約を結ぶまでの難易度は高いといえます。
また、営業を行う相手が『新規顧客』か『既存顧客』かによっても種類が異なります。
新規顧客営業は会社にとっての新しい顧客を獲得するために、アポイントの取れた相手を訪問したり、飛び込み営業を行ったりすることが多い職種です。
一方、既存顧客営業は『ルート営業』とも呼ばれる職種で、すでに契約を結んでいる顧客を定期的に訪問して現状の課題をヒアリングしたり、新商品を提案したりします。
求人に『営業職』と書かれていても、その募集要項によって仕事内容は大きく異なるため、転職活動を行う際には詳しくチェックしておきましょう。
営業のやりがい
営業職は会社の売上に直結する仕事を担う重要な職種であり、月々の成果がそのまま自身の評価につながります。
『会社の利益に貢献できること』をやりがいに感じる人もいれば、『成果を上げて評価が上がったとき』や『インセンティブによって高収入を実現できたとき』がやりがいにつながる人もいます。
そうした場合には、『今日は○件以上の顧客に営業を行う』などの短期的な目標を立てたり、『○年以内に年収600万円以上を達成する』『○年以内に昇進する』といった長期的な目標を立てたりすることで、モチベーションの維持を図ることが大切です。
また顧客と契約を結ぶためには、自分自身でさまざまな工夫・配慮をしてヒアリングや提案を行わなければなりません。しかしそれをストレスに感じることなく、『努力の結果として契約が取れた』という大きなやりがいとして捉える人もいるでしょう。
営業に必要な能力
営業職は未経験者でも始められる職種ですが、以下のようなスキルや心がけは最初から求められる可能性が高いといえます。意識的に身に付けておくようにしましょう。
- 身だしなみや立ち居振る舞いへの気配り
- 傾聴力や提案力を含めたコミュニケーション能力
- 自分なりにやり方を工夫できる自主性・積極性
- 日々情報を収集し、市場動向を分析できる能力
営業職として働く上でなにより大切なのは、第一印象です。身だしなみや立ち居振る舞いに対する気配りでその後の印象も大きく変わるでしょう。
また、コミュニケーション能力も重要な要素の一つです。ここでいうコミュニケーションとは、人との対話だけを指すのではありません。顧客の悩みや本心を引き出す傾聴力と、それに対して的確な情報を出せる提案力が求められるでしょう。
さらに自社製品の需要を分析し、競合他社の動きを把握しておくことも大切です。自主的に営業方法を工夫したり、市場の動きを分析したりできれば、効率的かつ効果的に営業活動を行っていけるはずです。
向いている人と向いていない人の特徴
営業職は未経験でも始めやすいとはいえ、傾向として向いている人と向いていない人がいるのは確かです。入社後に「自分は営業に向いていない」と感じれば、早期離職の可能性も高まるでしょう。
ここからは、入社後の違和感やイメージとのギャップを減らすために、営業職に向いている人・向いていない人の特徴を紹介していきます。
営業に向いている人
営業に向いている人が持ち合わせている特徴として、以下のようなものがあります。
- お店や旅行の行き先について調べるのが好き
- 計画倒れにならずきちんと実行できる
- フットワークが軽い
- 話し相手から話題を引き出すのが得意
- 初対面の人とでもすんなり打ち解けられる
- 人当たりがいいと言われる
- 地道に努力し続けられる
- 多趣味で色々な話題を持っている
- 相手の目線に立って考えるのが得意
これらの特徴がいくつか当てはまるようであれば、営業職への適性は高いと言えます。複数の特徴に当てはまらない場合でも、地道に努力し続けられる人は長く続けられる可能性が高いでしょう。
営業に向いていない人
一方、営業に向いていない人の特徴としては、主に以下の四つが挙げられます。
- コミュニケーションを取るのが苦手
- 身だしなみや立ち居振る舞いへの配慮が苦手
- 時間や規則にルーズな部分がある
- 一回の失敗を引きずってしまうことが多い
コミュニケーションや身だしなみ・立ち居振る舞いは、営業職の適正として必須のものです。それらに苦手意識がある人は、営業に向いていないと考えたほうが無難かもしれません。
また、時間や規則を守ることは営業職以前に『社会人として』の常識といえます。万が一、そこに自信のない人は転職活動に向けて修正していきましょう。
そして、上記の特徴の中でも特に注目したいのは、『失敗してしまったときに気持ちを切り替えていけるかどうか』です。
営業職には失敗がつきものです。たった一度の失敗を長く引きずってしまった経験がある、もしくは現在その状態に陥ってしまっているという人は、営業として働いても早期離職の可能性は高いといえるでしょう。
未経験におすすめの業界
営業職への転職を考えるなら、業界もしっかりと選びましょう。なぜなら、業界によっては経験や知識がないと仕事をスムーズに進められない可能性があるからです。
ここからは、未経験者におすすめの業界を三つ紹介します。現在転職を検討している人は、是非参考にして自分にふさわしい業界を選びましょう。
不動産業界
未経験から高収入を目指したい人におすすめなのが、不動産業界です。
不動産業界は一件あたりの契約単価が高いため、成果を残せばインセンティブで高収入を実現できる可能性が高いでしょう。
ただし、取り扱う商材として『賃貸物件』と『販売物件』の2種類がある点には注意が必要です。賃貸物件の場合は比較的契約が取りやすい分、単価が低い傾向にあります。
一方、販売物件の場合は契約が取りにくくなる分、一件あたりの契約単価が数千万円に上ることもあるため、年収1000万円以上も見えてきます。
『賃貸物件の営業で経験や知識を得てから、販売物件の営業に転職する』『販売物件の営業でとにかく実績を積む』など、自分なりのやり方を見つけましょう。
保険業界
保険業界では、個人顧客を中心に保険商材を販売します。訪問営業を行う場合もありますが、代理店などの場合は来店した顧客に対して営業活動を行う『カウンター営業』をメインとしていることが多いようです。
一般的な保険会社であれば、自社製品の特徴をしっかりと把握しておけば営業活動が行えますが、代理店の場合はさまざまな企業の保険商材をすべて覚える必要があります。その煩雑さがストレスにつながる人もいるでしょう。
しかし現在、保険業界(特に保険代理店)では『未経験者を育成してから戦力にしよう』という動きが活発になってきているため、未経験でも安心して就職できる業界といえるでしょう。
インターネット業界
インターネット業界は、近年スマートフォンやPCが普及してきたことによって急速に成長している業界です。経験者が少ないため未経験でも入りやすい企業が多い特徴があります。
ターゲットとなる顧客は主に法人で、ウェブマーケティング全般の代行サービス、コンサルティングなどを商材として営業活動を行います。
まだ発展途上の業界で、企業の成長とともに自分自身の給与や評価が上がっていくという点で大きなやりがいを感じられるでしょう。
しかし、言い換えれば人手不足が常態化している業界ともいえます。会社の規模によっては長時間労働をせざるをえなかったり、仕事量が多かったりする可能性もあります。
そのため、じっくりと教育を受けられる可能性は低いでしょう。自主的に学んでいくことが楽しいと感じる人におすすめです。
未経験から営業職を目指す
営業職は未経験から始めやすい業種ですが、無計画なまま転職活動を始めても希望の企業に採用されるとは限りません。入社できたとしても、自分が抱いていたイメージとのギャップが大きすぎると早期離職につながってしまうでしょう。
本記事で紹介した『営業が未経験でも転職しやすい理由』や『知っておきたい営業の知識』を最低限把握しておくとともに、『未経験におすすめの業界』を参考に転職活動を進めるようにしましょう。
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